今回は海外在住者(いわゆる非居住者)の資産運用・口座開設について考えていきたいと思います。
私も海外に長く住むようになり、長年資産運用を行っていることが知られると、いろんな方から相談を受けることがあります。
「海外在住者が日本株や米国株の取引をしたいけど、どうしたらよいの?」
「オフショア投信や保険は、海外在住者しか入れないから今のうちに入ってたいい?」
「現地で口座開いたほうが良い?日本の口座は開けられるの?」
などです。
私の知っている範囲で答えているのですが、どういう資産運用が良いかは、その方々のライフスタイルによる!というのが答えとなります。日本人の方は、将来設計とかあまり描けてない方が多いので(私も含めて)、このような質問が一番困ると思います。
ただ、「漠然と海外に来たからなんかやらなきゃ!」「駐在員になったので、余裕資金ができたのでなんかやりたい」というのは、ただ何となくはじめてしまうと、将来後悔するのではないかと思います。
当然、海外には良い金融商品もある一方で、いろんな罠や困難がありますので、慎重に検討して、注意しながら考えていきたいですね。
今回は海外居住者でも開設できる口座の紹介と、どういう人が口座を開設すべきかとまとめていきたいと思います。
日本非居住者の資産運用
日本は金融後進国ではない?!
日本では、1996年の金融ビックバン以降、投資環境が非常によくなってきました。
ネット証券の台頭や銀行でも世界中の金融商品が買えるようになっており、競争の激化から手数料も安く取引が出来るようになってきました。
さらに、2001年にiDeco、2014年からはNISA、2018年には積立NISAが開始され、税金優遇を受けながら、長期投資による資産形成ができるようになってきました。
最近ではYoutubeや書籍でも、個人投資家でも大成功を収めた方が、初心者でも着実に資産形成をする方法を発信しており、以前より投資を学習しやすい環境があると思います。
日本は投資後進国ではないです。
海外投資を勧める人は、日本の金融遅れを嘆き、海外の素晴らしさ!を説きます♪
日本人であれば、日本国内で資産形成するのが、安全性・税制面・情報量においても一番かと思います。特定の事情がない限り、ほとんどの方は日本国内が資産運用が良いと思います。
日本人であっても、非居住者は、日本の証券口座を保有できない
しかしながら
仕事や留学、リタイア生活を海外で過ごしている場合(日本に住んでいない方)は、日本の非居住者となり、日本の証券口座を新規開設・保有することはできません。
一部の証券会社では、非居住者向けに口座を保持してくれるサービスを行っています。
その場合、証券会社によって異なりますが、売買が一切できないところ、売却のみ行えるなど違いがあるようです。
理由は、”日本国外で金融商品取引業務を行う許可(免許)などを海外の監督官庁等から得ておらず、居住国の法令諸規則に則った対応を行うことはできない”とのことです。
<非居住者定義>
海外で働く場合やリタイア生活を行う方は、ほとんどの場合が住民票を国内から抜き「非居住者」になります。住民票を国内においておくケースも考えられますが、住民税や社会保険料などが必要になってくるため、現実的ではないです。
所得税法には下記のように定義されています。
判定 | 詳細 |
---|---|
居住者 | 国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。 |
非居住者 | 居住者以外の個人をいう。 |
法に規定する住所とは各人の生活の本拠をいい、 生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する。 |
海外居住になったら、一旦日本での資産運用は停止しなければいけません。
大手ネット証券の対応
非居住者になった場合の日本の証券口座の対応方法についてまとめます。数年前までは口座を閉じてください!という対応でしたが、少しずつ開かれてきているように感じます。
楽天証券 | SBI証券 | マネックス | |
---|---|---|---|
非居住者口座維持 | 出国前手続き | 出国前手続き | 不可(休眠口座) |
WEBログイン | 可能 | 可能 | ー |
お取引 | 売買ともに不可 | 売却のみ可能 | 不可 |
入出金 | 出金のみ可能 | 可能 | 可能 |
NISA・つみたてNISA口座 継続保有 | 継続保有が可能 (新規買付は不可) | 閉鎖 | ー |
ジュニアNISA口座 | 制度上、継続利用不可 | 閉鎖 | ー |
NISAロールオーバの申込み | 不可 | ー | ー |
特定口座の継続利用 | 可能 | 不可 | ー |
海外居住地での税制対応 | 不可 | 不可 | ー |
楽天証券は、「特定口座継続利用可能ですが、売買ともに不可」であることに対して、SBI証券は、「特定口座継続利用不可ですが、売却は可能」となっています。配当金も受け取れますので、ほったらかしにしておくこともできます。
詳細につきましては、各社の公式HPで確認ください。楽天証券、SBI証券、マネックス証券
少しずつですが、良い方向に改善されつつあるように思います。
いざというとき、売れるのは嬉しいですね!
海外在住者の資産運用方法
それでは、海外在住者が資産運用を行う方法を考えていきたいと思います。今回は以下の3点について書いていきます。実際に口座を開設する前に、最新情報を収集するようにしてください。
- 現地の証券会社で口座を開設する
- 海外の証券会社(非居住者可)に口座を開設する
- オフショア投資口座を開設する
海外では資産運用に関する甘い言葉での勧誘も
Googleなどで「海外駐在員 資産運用」と検索すると、ものすごい数の広告が出てくると思います。
日本居住者は、契約できないと謡うオフショア投資(オフショア保険、オフショア積立)などが多いです。
「海外駐在員である今しかできない!」という謳い文句に誘惑される方も多いのではないかと思います。
特に、海外駐在員になり”お金に余裕が出来たが、資産運用をやったことがないし、初めてみたいなぁ~と思われている方”はついやってみたくなることもあるのかと思います。
金融知識がない方に、怪しい人が忍び寄ってくるので注意が必要ですね!
日本はダメ!海外投資は素晴らしい!というFPは疑ったほうが良いです。
現地の証券会社で口座を開設する
居住している国の証券口座を開設します。
国によっては、日本よりも金融商品が豊富で運用しやすい国も多いと思います。
ベトナムのような新興国に住まいの場合は、ベトナム国内株式しか購入できないため、あまり良い選択肢ではないように思いますが、アメリカやイギリスのような金融大国でしたら、現地で口座を作ることで日本より多くの金融商品にアクセルできるようになることができます。
いろんな国を転々とすることを想定されているケースでは、その国の非居住者になった場合のことを口座開設前に確認しておいたほうが良いと思います。
条件は国様々ですね。良い条件で口座を開設できる国にいけば最高です!
海外の証券会社(非居住者可)に口座を開設する
その国の非居住者であっても、口座開設できる証券会社は存在しています。
最近では直接口座開設のために現地にいかなくても、ネットのみで口座開設ができます。
海外の生活が長くなるのであれば、これらの証券会社に口座を開いておき、メイン口座として、資産形成を行うのも良いと思います。
FX専門業者や仮想通貨業者も海外にはたくさん存在していますが、詐欺まがいのところも多くあり、あまりおすすめしません。
国 | 証券会社 | コメント |
---|---|---|
アメリカ | IB証券 | 商品が豊富で、日本でも口座開設者が多く、情報が豊富なのが良いです。 口座への初期入金額が100万円程度と高額になっているのがネックです。 |
Firstrade証券 | IB証券同様に、日本での口座開設者が多いです。 手数料も安く、基本的な株式・ETFは網羅しています。 | |
香港 | HSBC香港 | 渡航ができなく、口座開設は現時点で難しいかと思いますが 豊富な金融商品を扱っています。 銀行ということで、出口戦略は検討しやすいと思います。 |
シンガポール | フィリップ証券 | 日本語サポートもあり、口座開設は比較的やりやすいです。 日本株をはじめ、世界各国の株式、金融商品を買うことができます。 |
IG証券 | 英国の母体となる老舗の証券会社です。日本にも支店があります。 |
取り扱う金融商品・市場がことなっておりますので、調査の上、自分にあった証券会社と契約するのが良いと思います。手数料・口座維持費用などのチェックも行ったほうが良いと思います。
オフショア投資口座を開設する
オフショア投資は、香港やシンガポール、あるいはタックスヘイブン(マン島、ケイマン諸島など)と呼ばれる国で設立された保険や投資信託に投資する商品です。
日本では金融庁の認可が下りておらず、契約できないものが多く存在しています。逆にその規制がない海外居住者であれば、日本人であっても、それらの金融商品が購入できます。
口座を開設し、一括投資(海外送金)するものもあれば、クレジットカードを利用して、月数万円ずつを積み立てていく口座も存在します。
一般的には、FPや代理店を通して購入します。
会社 | 内容 |
---|---|
Sunlife | 本社はカナダのトロント。積立保険などを提供 |
AIA | 本社は香港。アジア最大規模のシェアを誇る保険会社で、積立保険を提供 |
Prudential | 本社はイギリスのロンドン。生命保険、年金、資産運用などを提供 |
オフショア地域での積立投資を行っているロイヤルロンドン(RL360)、インベスタートラスト(ITA)などの会社もあります。
<オフショア投資・保険の注意点>
海外は夢のような金融商品が存在するというのは幻想です。
取ったリスクに応じて、リターンが得られます。運営会社・保険会社は商売であり、FPも販売することで、手数料を稼ぎ、利益を得ています。
これは日本であっても、海外であっても同じです。その上、資金拘束期間が長く、好きな時に解約できない等デメリットもあります。
こういうことを言ってくるFPは注意しましょう!
- 高利回りで運用されるファンドがたくさんある。(ありません!)
- オフショア地域だから、税金がかからない。(居住地域により税金がかかります)
- 手数料の説明をしない。(手数料で儲けています)
日本でも同じようなリスクを取れば、同じくらいのパフォーマンスは出すことができます。
ものすごくよい金融商品のように説明してくれますが、それは幻想です。
税金の話は、脱税になりますので、注意が必要です。
昔はそれでよかったのかもしれませんが、時代が違いますね♪
<オフショア投資をしてよい人>
海外に資産を持ち出せるというのが、大きなメリットと考える人もいます。
日本のハイパーインフレ、銀行封鎖など、日本のみに資産を集中していると、カントリーリスクがない訳ではありません。
日本にある程度の資産を形成し、海外に一部の資産を置いておきたい人は、この投資を使う価値があると思います。
また、共通名義などで、資産を次の世代(子供)につなぐことができたり、メリットもあります。
海外在住者(駐在員・リタイア)の資産運用は長期目線で
口座開設自体は、ある程度の英語力と調べる能力があれば、開設は可能だと思います。
しかし資産運用は短期のものではなく、10年後、20年後と見越しておこなっていくものだと思っています。そのとき、どのような環境になっているか想像することは簡単ではありません。
資産運用は投資がゴールではなく、投資~運用~回収といった一連の流れと、出口戦略が一番大事です。
大事な資産を必要なときに必要なだけ使えるように出口戦略は出来るだけシンプルにしたほうが良いと思います。長期間資金が拘束されるものは特に注意が必要です。
短期の居住者
駐在員や留学など短期(2~3年)での海外生活の場合、それほどその期間を資産運用をストップすることはマイナスにならないと思います。
現金をしっかり貯めておき、日本に帰国した際に資産運用に回せばよいと思います。
特に海外に来るまで、資産運用をしたことがない方はなおさらだと思います。
海外口座での投資はメリットもありますが、法律の改正や出金トラブルなどのデメリットもありますので、将来の負担になりかねない事態も想定できます。
オフショア投信など、積立5万円/月としても、
10年で600万円、20年で1200万円となる高額商品です。
長期的なビジョンなしに購入して、途中解約する方が多く、注意が必要です。
長期の居住者
逆に、長期で海外に住むことを前提としている方の場合は、積極的に海外口座を開設し、そこにコア資産を移動させていくことを検討しても良いと思います。
日本へ入出国するたびに、口座をどうしようか検討する必要もなくなりますし、居住国の事情に合わせて、税金などの対策もできると思います。
日本の居住者になった場合は、日本での確定申告をお忘れなく
まとめ
今回は、相談の多い海外居住者の資産運用についてまとめました。
海外在住者は、日本の口座で資産運用をすることはできませんが、海外口座を利用して資産形成をすることができます。ただ、短期での海外移住の場合は、そこまで手間をかけてまでする必要はないと思っています。ご参考になれば幸いです!
これはライフスタイルによるものですので、どちらが良いというものではないと思います。
それでは
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