今回は、最大の乳業メーカービナミルク(ティッカー:VNM)をご紹介します。
ベトナム企業ではかなり有名な会社です。
ベトナム株投資を考えている人はまずこの銘柄を買っているのではないかと思うほど、有名な会社になっております。
2021年は非常に上昇したベトナム株式市場ですが、優良企業であるビナミルク(Vinamilk)は、1月中旬を最後に下落トレンドに向かっており、1年間で約22%の下落をしております。5月には、時価総額は191兆8,580億ドンで、ホアファットグループ(ティッカー:HPG)を下回り、証券取引所の時価総額リストで5位にまで落ちる結果となりました。
その後も業績および株価は回復せず、低空飛行をつづけています。
今回は、2023年度の経営計画から、株価の今後を予想していきたいと思います。
2021年の株価は、浮上することなく、そのまま低迷しました。
事業の立て直しで、2023年以降浮上をもくろんでいます。
事業内容
ビナミルクは、酪農および乳製品生産を主事業とするベトナム乳業メーカー最大手企業です。
1976年の創業以来、乳製品を中心に、44年間信頼あるブランドとして、ベトナムで認知されています。
国内外へ安全・安心な製品供給を通じて、強固な事業基盤を確立しています。
品質基準が厳しく、良い品質の製として、
ベトナム人に絶対の支持をうけています。
商品群
商品群は、牛乳、ヨーグルト、コンデンスミルク、チーズ、ジュース、アイスクリームなどです。
200種類以上の幅広い商品を整えており、ベトナム人にとって必要不可欠な会社として運営されています。
ビジネスモデル
原料調達の海外への依存度を低下させ、自社調達を強化するため、直営牧場の設立に注力しており、現在、全国に12カ所の直営牧場を有しており、3万頭の乳用牛を飼養していいます。その他、6600を超える農場(10万頭の乳用牛)と提携しており、長期的に安定した供給を目指しています。
また、製品は、全国の小売店、量販店、コンビニエンスストア、直売店などで販売など、End to Endのバリューチェーンを確立しており、この会社の強みになっています。
収益に占める輸出の割合は2割になっていますが、まだまだ海外での認知度が高くない状態です。
カンボジアやラオスなど近隣諸国への輸出拡大を目指しています。
提携、M&Aなど
モックチャウミルク(Mộc Châu Milk)
シェア拡大および、競合他社への対応を目的に、北部最大級の乳牛牧場を誇るモックチャウミルクを買収しています。
そのため、2019年12月にGTNフードの保有利率を75%に引き上げ、経営権を掌握しています。
モックチャウミルクは、乳牛2000頭を保有しており、提携先は合わせて23,000頭の乳牛を確保している。
2020年12月には、未上場公開株式市場(UPCoM)に店頭公開をしました。
双日
ビナミルクは、食肉業界への進出を通じて事業の多角化をはかるため、双日との合弁企業を設立しました。まずは、日本産の牛肉を調達し、ベトナムでの販売を増やすとのことですが、将来的にはベトナムで育てられた肉用牛を販売する計画を立てています。
ベトナムの乳製品最大手ベトナム・デイリー・プロダクツ(ビナミルク)グループと双日は牛肉製品の加工・販売を目的にした合弁会社を設立することで合意した。ビナミルクはこれまで乳製品の製造・販売が中心だったが、双日との合弁を通じて事業の多角化につなげる。
4月にも首都ハノイ市に設立する新会社には、ビナミルクグループが51%、残りを双日が出資する。まず新会社が日本産の牛肉を調達し、ベトナムの大手スーパーや外食チェーンなどに供給する。
ビナミルクが持つベトナム国内でのブランドや販売網と双日の畜産製品の販売ノウハウを融合し、国内の牛肉市場を開拓する。
日経新聞より
乳製品市場が飽和状態になることが予想され、またベトナムの食肉用の牛肉需要が高まっていることから、ビナミルクにとって長期的な成長事業として期待できます。
フィリピン進出:デルモンテ社と合弁会社
フィリピン大手食品会社デルモンテ社との提携をはじめました。
フィリピンは東南アジアで2番目となる1億1000万人弱の人口を抱える一方、1人当たりの乳製品の消費量は比較的少ないという。両社は市場開拓の余地があると期待を寄せています。
競合
国内では2番手であるTHミルク(未上場)が非常に強く、ビナミルクにとっては脅威となっています。シェアなどは公式には公表されておりませんので、わかりません。
スーパーなどでの販売エリアからすると、ほぼ互角ともいえるスペースがあります。
販売競争激化による価格抑制および販促費が、ビナミルクにとって大きな足枷になっています。
現在の投資環境について
下記の点から、保守的な収益予想としており、市場評価としては下げに転じています。
原料価格急騰による利益圧迫
ビナミルクは、2021年以降、投入粉乳材料の価格が前例のないほど上昇したという状況に直面しています。
粉ミルクの価格だけでなく砂糖の価格も2020年から急激に上昇し、ビナミルクの第1四半期の粗利益率は2020年の第1四半期と比較して3.1ポイント減少して43.6%になりました。
ビナミルクは、酪農農家と長期契約を結ぶなどして、価格の維持に努めているということですが、原価上昇は避けられない状態です。
業界内での競争激化、業界の成長率鈍化
THミルクおよび外資企業の参入により、競争が激化しているため、原材料高騰を販売価格にどのように反映していくかという点で困難があります。低価格帯の商品は国内サプライヤー、高価格帯のプレミアム商品は、外資企業のサプライヤーがあり、うまくブランド力を使いながら、活路を見つけていく必要があると思います。
ファンドによる売却(低成長率に嫌気)
ビナミルク自体の成長力が、他の会社に比べて、落ちているという判断からファンドによる売却が加速しています。
Arisaig Asia Consumer Fund Limited、Matthews Pacific Tiger Fund、Stichting Depositary APG Emerging Markets Equity Pool、The Genesis Emerging Markets Investmentなどのファンドが比率を減らしたと発表しています。
ビナミルクの財務分析
収益
2022年の売上は60,075億ドン、経常利益は8,516億ドンとなりました。(利益率14.2%)
2023年の売上は63,800億ドン、経常利益は9,205億ドンの計画です。(利益率14.4%)
前期と比較して、売上:6.2% 経常利益:8.1%の成長率です。
手堅く売上は伸ばしていますが、
伸び率は成長著しいベトナムでは物足りないところです。
自己資本比率
自己資本比率は67%です。
2022年は資産、負債とも減少しています。
キャッシュフロー
本業の収益は常にプラスであり、大きな問題はないように思いますが、収益の伸びが少ないなかで、新規事業への投資が進んでいないのは少し気になります。
配当金でキャッシュアウトが多くでていますので、今後も配当が維持できるかがカギになると思います。
成長率
高い成長率を誇ってきましたが、ここ数年成長率の鈍化が目立ってきています。
市場の飽和とともに、競合会社も増えてきていることから、激しいシェア争いが行われているものと思います。
配当利回り
2022年は配当金が5000ドンということで利回りとしては6%ありましたが、今後もこの金額を維持できるかは、かなり厳しいものと思われます。
チャート
現在の株価は下記のようになっています。(FinAnt提供)
【ベトナムが味わえる♪ビナミルクのココナッツジュース!】
【ベトナムが味わえる♪ビナミルクのコンデンスミルク!】
まとめ・株価予想(独断)
ビナミルクがおかれている環境は決して楽ではないものの、安定した事業基盤をもっており、大きく崩れることはないものと思われます。
今後は畜産、ヨーグルトなどの新規事業の伸びがやってくれば、大きなチャンスになると思います。
PERの5年平均が18.8、今期のEPS予想が4,400ドンとなっており、予想株価は82,830ドンです。
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ビナミルクはVN30の構成銘柄です。
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