今回は、最大の乳業メーカービナミルク(ティッカー:VNM)をご紹介します。
Vinamilkは、ベトナム株投資を始める方がまず目にするであろう“代表銘柄”であり、同国では老舗の優良企業として広く知られています。
しかしながら、その株価はここ数年冴えない展開が続いています。かつて時価総額ランキングで常に上位を占めていた同社も、以前のような“絶対的な主役”ではなくなりつつあります。
業績は安定しているものの、株価は割安感のある水準にとどまり、投資家からの注目度もやや後退しています。
2024年も年間で小幅な増収増益にとどまり、成長性に対する懸念も根強く残っています。
ただし、2025年に向けてVinamilkは着実に“次の成長の種”を蒔いています。
本記事では、2024年の実績とIR資料・証券会社レポートをもとに、Vinamilkがどこへ向かおうとしているのか、そして2025年以降の株価はどう動くのかを読み解いていきたいと思います。

復活を望まれてる方も多いと思います!
会社概要

概要
ビナミルク(正式名:Vinamilk)は、1976年に設立されたベトナム最大の乳製品メーカーです。
1976年の創業以来、乳製品を中心に、44年間信頼あるブランドとして、ベトナムで認知されています。
液体ミルク、粉ミルク、ヨーグルト、加糖練乳などを中核に、国内乳製品市場で40%以上の圧倒的なシェアを誇ります。
製品はベトナム全土で販売されているだけでなく、アメリカ、カナダ、韓国、日本、カンボジア、中東、アフリカなど50カ国以上に輸出されており、グローバル乳業企業としての地位も確立しつつあります。

品質基準が厳しく、良い品質の製品として、
ベトナム人に絶対の支持をうけています。
経営陣
CEOのMai Kieu Lien(マイ・キエウ・リエン)氏は、Vinamilk創業期から経営に携わり、ベトナムで最も著名な女性経営者の一人です。
40年以上にわたり同社を牽引し、国有企業から民間上場企業への移行、グローバル展開、ブランド強化を一貫して進めてきた実績を持ちます。

戦略・マーケティング
海外展開の加速
Vinamilkは国内市場の成熟を見据え、海外事業を強化しています。
2024年の輸出売上は前年比+12.4%増の5,664億VNDと好調で、特に米国(Driftwood)、カンボジア(Angkor Milk)など子会社を通じた現地深耕型の成長が著しいです。
今後は中東・アフリカ・オセアニアを中心に輸出対象国を拡大し、2025年も二桁成長を維持する見込みです。
新規事業「Vinabeef」で食品多角化へ
Vinamilkは2024年に牛肉加工・販売事業「Vinabeef」を本格始動しました。
Sojitzとの合弁事業で、同年12月に加工工場稼働、2025年Q2には牧場も運用開始予定です。
流通面ではAEONやCoopmartなど大手スーパーとの取引がすでに始まり、2025年は前年比10倍の売上(1,000〜1,500億VND)を見込むなど、同社にとって新たな収益源として注目されています。
高付加価値製品と供給体制の再構築
都市部や高齢者層のニーズに対応すべく、乳糖フリー、高たんぱく、オーガニック、HMO配合粉ミルクなど健康志向の商品群の開発を強化しています。
2024年には新製品25品目を含む125商品を市場投入しました。また、北部市場向けに供給力を高めるため、2025年Q2からハンイエン新工場の建設を開始しています。
完成後は北部の供給能力が50%以上増加し、物流効率と利益率の改善が期待されています。
ビナミルクの財務分析
収益

Vinamilkは2022年に売上・利益ともに落ち込んだものの、2023年以降は安定回復基調にあります。
2024年は前年比で売上+2.3%、純利益+4.8%と緩やかな増収増益を達成。
2025年以降も海外市場や高付加価値商品の伸長により、売上は年3〜5%、利益は年5〜7%の成長が予想されています。
利益率も改善傾向にあり、事業基盤の底堅さがうかがえます。

手堅く売上は伸ばしていますが、
伸び率は成長著しいベトナムでは物足りないところです。
自己資本比率

自己資本比率は2024年時点で65.7%と高水準を維持しており、財務体質は非常に健全です。
総資産・総負債は緩やかに増加していますが、自己資本比率は安定して推移しており、大型投資や新規事業展開を進める中でも堅実な資本管理がなされていることがわかります。
保守的な財務運営は、同社の高配当政策の持続性にもプラス材料です。
成長率

Vinamilkの2024年のROE(自己資本利益率)は29.4%、ROA(総資産利益率)は17.4%と、いずれも高水準を維持しています。
これは原価管理の徹底や高付加価値商品の展開、また設備投資を抑えた効率的な経営によって資本が有効に使われていることを示しています。
ただし、売上の成長が限定的な中でROEが高いという点には注意が必要です。配当や自社株買いによって自己資本が圧縮されている可能性もあり、必ずしも将来の成長を意味するとは限りません。
今後はVinabeefや海外事業などが売上の拡大につながり、ROEやROAの高さに「成長の裏付け」が伴うかが注目点となります。
キャッシュフロー

Vinamilkのキャッシュフローは安定的な事業活動による黒字(営業CF)に支えられており、2024年も3,000億ドン超を確保しています。
一方、設備投資や新事業展開に伴う投資キャッシュフローは継続的なマイナスで、財務CF(主に配当支払い・債務返済)も資金流出が続いています。
結果として現金残高は減少傾向にありますが、自己資本比率の高さと合わせて見れば、財務基盤にはまだ十分な余裕があるといえます。
配当利回り

Vinamilkは安定的な配当を継続しており、2024年の配当利回りは約6.4%と高水準です。
しかし、配当性向は近年70~95%前後と非常に高く、2022年には一時的にEPSを上回る年もありました。これにより、内部留保が少なくなり、成長投資の余力に制限がかかるリスクもあります。
ただし、Vinamilkは営業キャッシュフローが安定して黒字であり、自己資本比率も65%超と健全な財務基盤を保っているため、現状では無理のある還元とは言えません。
今後はVinabeefや海外展開による利益成長が伴えば、高配当を維持しつつ持続的な成長も狙える、魅力あるディフェンシブ銘柄として評価されるでしょう。
チャート
現在の株価は下記のようになっています。(FinAnt提供)
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【ベトナムが味わえる♪ビナミルクのコンデンスミルク!】
今後の見通し
2025年以降のVinamilkは、「成長の再起動」に向けて着実な布石を打ち始めています。以下の3つの軸が、今後の業績拡大と株価の反転を左右するカギになります。

海外事業の拡大と輸出主導の成長
中東・アフリカ・オセアニアなど、新たな輸出市場への進出が進んでおり、米国・カンボジアなどの子会社も2桁成長を維持中。2025年の輸出売上は前年比+10~12%成長が予測されており、海外事業が売上全体の20%を超える日も近いと見られています。
新規事業「Vinabeef」の収益貢献
2025年は牛肉事業Vinabeefが本格稼働し、売上は前年の10倍(1,000~1,500億VND)規模に。流通網も整備されており、冷凍調理食品など新商品も投入予定。食品事業の多角化がいよいよ収益の柱へと育つフェーズに入ります。
高付加価値路線と地域供給体制の強化
乳糖不耐症向け、高たんぱく製品、オーガニック、シニア市場向けなど機能性製品群の拡大と、新工場(ハンイエン省)の建設により、北部地域の供給効率と物流が大幅改善予定。収益性とシェア維持の両立を狙います。
まとめ・株価予想(独断)
Vinamilkは依然としてベトナム乳製品市場で圧倒的な地位を維持し、高いROE・安定したキャッシュフロー、6%以上の配当利回りという“高配当・高効率の優良株”としての魅力を持っています。
しかし近年は国内市場の成長鈍化とともに、売上・利益の伸びが抑制されており、株価も長らく低空飛行が続いています。
2025年は、同社にとって成長再加速への「布石」が動き出す年です。
輸出主導の海外展開、牛肉事業Vinabeefの立ち上げ、新工場による供給網の強化、高付加価値商品の拡充など、将来の売上成長を支える取り組みが具体化しています。新規事業の収益化には時間がかかる点はリスク要因です。Vinamilkが持つ堅実さとブランド力を維持しながら、これらの「仕込み」がいつ業績に結びつくかが今後の焦点となります。
結論として、Vinamilkは中長期での安定性と成長の両面を備えた銘柄であり、“守りながら攻める”ベトナム株投資のコア候補として注目する価値があります。
PERの過去5年平均は15.1で、予想EPSから見た適正株価は63,188VNDになります。

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