ベトナムの連続増配株─“増やし続ける企業”の見つけ方

株式市場が不安定な時期こそ、安定的な収益をもたらしてくれる“連続増配株”に注目が集まります。

毎年配当を増やしている企業は、持続的な利益成長と株主への誠実な姿勢を示しており、長期投資において大きな安心感を与えてくれます。

これまでベトナム市場における連続増配銘柄の情報が体系的に整理されてきませんでしたが2025年よりTradingViewのスクリーナー機能で、連続配当年数・連続増配年数といった指標が取得できるようになりました。

これにより、個人投資家でも客観的に優良配当株を抽出しやすくなり、配当重視の投資戦略がより実践しやすくなっています。

本記事では、この新しいデータを活用し、ベトナム株の中から連続増配を続ける注目銘柄を取り上げながら、配当投資の魅力と今後の展望について考察していきます。

連続増配株とは？

連続増配株とは、毎年欠かさず配当を増やし続けている企業のことを指します。

単なる「配当あり企業」ではなく、「増やし続ける」ことに意味があります。

これは企業の利益が継続的に成長している証拠であり、株主への姿勢が明確に表れていると言えます。

では、なぜ連続増配株が注目されるのでしょうか？

連続増配株の魅力

• 企業の財務健全性が高い
  • 毎年増配するには、安定的に利益を出し続ける必要があります。
• 株主還元の姿勢が明確
  • 利益を内部留保に偏らせず、株主に還元する文化がある企業です。
• 長期での“配当利回りの成長”が期待できる
  • たとえば、5%の利回りで10%ずつ増配が続けば、10年後には10%以上の利回りに成長することもあります。
• 株価下落時のクッションになる
  • 市場が不安定でも、増配が続く企業は投資家の心理的支えになります。

「高配当株」との違い

「高配当株」と「連続増配株」は似ているようで異なります。

高配当株は一時的な業績による配当の高さであることも多く、将来減配リスクも抱えています。

一方、連続増配株は将来にわたっても安定して“配当を増やす力”を持つ企業です。

データの取得方法

１．Trading Viewを開きます。

２．Trading View の画面から、プロダクトースクリーナー株式を選択します。

３．マーケットを選択し、ベトナムを選びます。そのあと、配当のタグを選びます。

４．配当に関する情報が表示されます。

TradingViewスクリーナー：配当関連指標の解説

TradingViewのスクリーナーでは、配当株の分析に役立つ多くの指標が提供されています。

ここでは、その中から連続増配株の選定に特に有効な項目を取り上げ、それぞれを解説します。

項目名	説明
1株当たり配当金 （通期）	年間（通期）で1株あたり支払われる配当金の合計金額 ベトナムドン（VND）で表示。
1株当たり配当金 （四半期）	四半期ごとの配当金額（表示なしは該当なし） 四半期配当制の銘柄に有効。
配当利回り （直近12ヶ月）	過去12ヶ月間の配当金をもとに計算された利回り 株価に対して何％の配当収入があったか。
配当利回り（予測）	今後予測される配当金に基づく利回り。 株価に対する見込み配当収入の割合。
配当性向 % （直近12ヶ月）	利益に対してどれだけの割合が配当として支払われたか。 配当 ÷ 純利益 × 100 で算出。
1株当たり配当金成長率 （前年比）	配当金が何％増加（もしくは減少）したか。 例：+40.00% なら前年より40%増配。
連続配当	何年連続で配当を支払っているか。配当の継続性を示す。
連続配当成長率	何年連続で配当金額を「前年よりも増やして」いるか。 いわゆる「連続増配年数」にあたる指標

ベトナム市場の注目銘柄（３期以上連続増配）

2025年時点で、ベトナム株の中には3期以上連続して増配を続けている企業が複数存在します。連続増配年数だけでなく、ROEや配当利回りなどの基本指標も参考に、配当の「質と持続性」も併せて確認しましょう。

Ticker	社名	連続 増配 年数	連続 配当 年数	株価	時価総額	PER	PBR	ROE	配当 %
PDN	ドンナイポート	8	13	125,000	4,630,488	14.2	3.7	29.1	3.6
FTS	FPT証券	8	9	37,400	11,441,385	20.7	2.7	13.8	1.34
SLS	ソンラ製糖	6	8	198,800	1,946,639	3.7	1.3	38.1	10.06
FPT	FPT情報通信	5	15	109,400	160,365,016	17.7	5.4	28.7	1.83
PMS	石油機械工業	5	15	36,400	261,202	8.3	1.5	18.4	9.2
NBW	ニャーべー給水	5	7	32,400	353,160	11.6	1.9	17	5.37
VAF	バンディエン焼成	4	9	19,000	715,642	12.5	1.4	11.1	5.26
SSI	SSI証券	3	16	22,950	45,024,975	14.5	1.6	11.3	3.5
DVP	ディンブ港湾	3	15	76,500	3,060,000	9.1	2.1	23.5	9.8
NFC	ニンビン肥料	3	11	42,400	667,005	9.2	2.6	31.2	4.72
VGC	ビグラセラ	3	8	39,300	17,620,156	15	2.1	13.7	5.73
TDM	トゥーザウモット	3	7	52,700	5,797,000	17.2	2.3	7.9	2.66
SAV	サビメックス	3	7	16,200	401,674	7.3	1.1	15.2	6.17
TN1	TNS	3	4	10,000	546,323	10.7	0.6	5.8	5

これらの企業は、安定した収益と十分なキャッシュフローを背景に増配を継続できる力を持っている点が共通しています。
単なる高配当ではなく、「連続増配」という実績は、経営の健全性や企業姿勢を見極めるうえでの重要な判断材料となり、複数の指標を組み合わせることで、より堅実な投資先の選定が可能になります。

連続増配株の本質とは？

連続増配株とは「株主への責任感」と「企業の強さ」が形になったものと考えています。

経営の信頼性の証

連続して配当を「増やす」には、毎期の利益成長だけでなく、将来の見通しに対する自信が必要です。これは、経営陣が株主と真摯に向き合っている証拠でもあります。

景気に左右されにくい企業体質

不況時にも増配を続けるには、強固なビジネスモデルと安定的なキャッシュフローが不可欠。

連続増配株は、景気変動に強い「選ばれた企業」であることが多いです。

短期ではなく、長期で報いてくれる存在

連続増配は「じわじわと利回りが高まる」ことで、長期的な資産形成において非常に有利です。

まさに「時間を味方につける投資」の象徴です。

[お知らせ] ベトナム高配当株投資ガイド2025 発売中

まとめ

連続増配株は、単なる“高配当株”とは異なり、企業の健全性・成長性・株主還元姿勢が揃った稀有な存在です。

今回ご紹介したように、ベトナム市場にも、毎年のように配当を増やし続けている優良企業が着実に育っています。

配当利回りやPERといった定量指標だけでなく、どれだけ長く増配を続けているか、という“履歴”こそが、企業の信頼度を測る鍵になります。

これからの時代、マーケットの短期的な波に一喜一憂するよりも、「持っていて安心できる企業」「じわじわ報いてくれる株」を一つずつ丁寧にポートフォリオに加えていくことが、長期的なリターンにつながると思っています。

成長を続けるベトナム市場で、“配当という形で信頼を証明し続ける企業”に、今あらためて注目してみようと思います。