今回ご紹介するのは、ベトナム最大の住宅開発企業、Vinhomes(ビンホームズ/ティッカー:VHM)です。
親会社であるVingroupの中核事業として、ハノイやホーチミンをはじめ全国各地で大規模都市開発を手がけてきました。Vinhomesは単なる住宅供給企業に留まらず、近代的な都市開発を通じてベトナムの人々の生活水準向上に貢献し、国の持続可能な成長を牽引する存在です 。
住宅だけでなく、病院、学校、商業施設、公園といった暮らしに必要な要素を一体的に整備するその開発手法は、単なる不動産開発の枠を超えており、Vinhomesのプロジェクトは、ベトナムにおける新しい都市生活のかたちを提示しており、一種の“民間による都市モデル”とも言えるかもしれません。
本記事では、2025年を視野に入れたVinhomesの事業展開と今後の見通しについて整理していきます。ベトナム不動産の未来を占ううえでも、注目すべき企業の一つです。
会社概要

概要
Vinhomes(ヴィンホームズ)は、ベトナム最大のコングロマリット・Vingroup(ティッカー:VIC)の不動産部門を担う企業で、住宅および都市開発を専門としています。
2018年にホーチミン証券取引所(HOSE)に上場して以降、住宅供給数、土地保有面積、都市開発規模のいずれにおいても国内トップのポジションを維持しています。
同社が開発するプロジェクトは、単体の集合住宅や戸建て住宅にとどまらず、教育・医療・商業施設なども含めた“街全体”をつくる形が特徴です。これにより、入居者の生活インフラが最初から整った状態で提供される点に強みがあります。
現在、全国で約19,600ヘクタールの土地を保有しており、ハノイ、ホーチミン、ハイフォン、クアンニンなどにおける大型プロジェクトを中心に、継続的な開発を進めています。
親会社
親会社は、ビングループとなります。Vinhomesが開発する都市エリアは、このVingroupのエコシステムと密接に連携しているのが大きな特徴です 。
Vinhomesの住宅地のすぐそばには、Vincomのショッピングセンターがあり、Vinmecの国際病院やクリニック、Vinschoolの学校が併設され、VinBusの電気バスが走り、V-Greenの充電ステーションが設置されるといった具合です 。
これにより、住民は生活に必要なあらゆるサービスを身近で享受できる、利便性の高い統合された生活環境が提供されます。
ビングループにつきましては、下記の記事をご参考にしてください。
経営層

CEOは、グエン・トゥ・ハン(Nguyen Thu Hang)です。2022年就任、オーストラリアおよびフランスで会計・金融を修め、ベトナム大手銀行でリスク管理や法人営業を歴任。2020年にVinhomesへ。財務戦略と開発案件のバランスをとりつつ、社会的住宅や新規プロジェクト展開を着実に進めています。金融・リスク管理に強いことから、急速に変化する不動産業界でも安定した舵取りが期待されています。
マーケティング・戦略
Vinhomesの戦略は、単なる住宅供給にとどまらず、「都市そのものをつくる」という発想に基づいています。
“物件を売る”のではなく、“都市をつくり、暮らしを提供する”こと。
これは、Vingroupの理念「ベトナムの未来像を先回りして実装する」という方針とも一致しており、Vinhomesはそれを現実の土地の上に具現化する最前線を担っています。
「超大規模都市開発」への進化と戦略的な土地取得

Vinhomesは、従来の数百ヘクタール規模の都市から、数千ヘクタール規模の“Super-mega Project”へとステージを移行しつつあります。
これらは、世界水準の計画とインフラを備え、国の主要交通網とも直結する、まさに新しい「街」そのものを創り出す試みです。
象徴的なプロジェクトには、Apollo City(Quảng Ninh)やWonder City(Hà Nội)などがあり、国家インフラとも連動した未来型都市を創出しています。
2024年末時点での保有土地は約18,800ヘクタールに達し、ハノイ・ホーチミンだけでなく、観光・地方成長が見込まれるエリアでも積極的に展開。この“広大なランドバンク”こそが、将来の成長余地を物語っています。
社会的住宅と中間層へのアプローチ

近年は、ベトナム政府の方向性に合わせて、低所得者層向けの住宅供給にも力を入れており、「Happy Home」ブランドのもと、手頃な価格でありながら充実した設備とサービスを備えた社会住宅プロジェクトを推進しています。
若年層や中間層の住宅取得ニーズに応えつつ、需要層の裾野拡大を狙っています。
2025年以降に向けて、50万戸の供給目標が掲げられており、地方都市への展開も視野に入れています。
マーケティング手法の進化
Vinhomesは、従来の販売代理店経由のモデルから、デジタルチャネルやバーチャル展示を強化しています。2024年10月にローンチされた「Vinhomes Market」は、ベトナム初の本格的な不動産取引オンラインプラットフォーム。物件検索からバーチャル内覧、契約までがワンストップで可能になりました。
コロナ以降、オンライン化した若い顧客層へのアプローチを拡大しており、顧客エンゲージメントの向上を図っています。また、外国人投資家・駐在員向けにも英語・中国語対応のサイトを展開し、越境販売の拡大も視野に入れています。
ビンホームズの財務分析
最終更新 2025/5

SSI証券のデータを参照しています。
PL

2021年をピークに一時的に減速したものの、2023年および2024年には引き渡しの進展により売上・利益ともに安定した推移を見せています。
2025年は大型プロジェクトの寄与により回復が見込まれますが、2026年には販売サイクルの谷間に入り、再び減収減益となる予想です。
証券各社の平均値では、2025年の売上は約9.2兆VND、純利益は約3.3兆VND、2026年はそれぞれ約8.4兆VND、3.1兆VNDと依然として高水準を維持する見通しです。
利益率も30%台後半で安定しており、収益性の高さがうかがえます。

2025年26年の予想は、各証券会社意見が割れてる感じです。
自己資本比率

自己資本比率は、2021年に一時的に上昇したものの、以降はやや低下傾向が続いています。
2024年時点では39.1%となっており、堅実な財務構造を維持しているとはいえ、総資産の増加に対して負債の比重がやや高まっていることがうかがえます。
とくに2022年以降は大型プロジェクト推進に伴う資金需要の増大が背景にあり、財務レバレッジの活用が進んでいると考えられます。今後の資金調達や配当方針にも注目が必要です。

強気の姿勢が現れてますね。
資本効率

Vinhomesの2024年のROEは16.7%、ROAは6.3%です。
依然としてベトナム企業の中では高い水準を維持しています。ただし、過去数年と比較すると、いずれの指標も低下傾向にあり、資産効率にはやや鈍化が見られます。
背景には、総資産の拡大と利益成長のギャップ、ならびに大型プロジェクトの先行投資負担があると考えられます。
キャッシュフロー

2020年以降は事業活動から安定したキャッシュを生み出してきた一方で、2024年に初めて事業キャッシュがマイナスに転じています。
これは収益性の悪化ではなく、Royal Islandなど大型プロジェクトの引き渡しに伴う原価支出や販促費用の先行増加が影響した可能性が高いです。
一方で、投資活動キャッシュは縮小が続き、財務キャッシュは増加に転じ、投資キャッシュもプラスに転じたことから、設備投資のピークを過ぎた様子がうかがえます。
全体として、収益化と資金管理の間で慎重なバランスを取る姿勢が見て取れます。
配当金

Vinhomesは2021年と2022年に配当を実施し、特に2022年は配当利回りが約5%に達しましたが、2023年以降は配当を完全に停止しています。
これは利益が減少したからではなく、戦略的に内部留保を優先した結果です。
株主還元よりも中長期的な都市開発・収益回収を優先する姿勢が明確です。
チャート
現在の株価は下記のようになっています。(FinAnt提供)
今後の見通し
Vinhomesの2025年から2026年は、「すでに販売済みの物件から確実に利益を回収しながら、次の主力案件を仕込み、収益モデルそのものを再構築する」移行期にあたります。
Royal Islandの引き渡しで2025年の利益を確保
2025年における最大の収益源は、Royal Island(ハイフォン)の本格的な引き渡しです。
このプロジェクトは総面積877ヘクタール、2023年末までに7,500戸以上が販売済となっており、2024〜2025年にかけての引き渡しにより売上と利益の計上が進みます。
土地取得が完了済で原価率も安定していることから、販売済み在庫の消化がそのまま高収益につながる見込みです。
Wonder Cityが2026年以降の柱へと成長
Royal Islandに続く主力案件として、VinhomesはWonder City(ハノイ西部)の販売を強化しています。総面積133ヘクタールのこのプロジェクトは、2025年中に販売が加速し、2026年以降に初回の引き渡しが予定されています。
中価格帯〜高価格帯で構成されており、利益率の面でも期待が高いプロジェクトです。とくに、2026年にRoyal Islandの引き渡し効果が薄れる中で、このWonder Cityが新たな利益源となるかどうかが注目されます。
Apollo Cityで多段階的な利益回収へ
クアンニン省で開発が始まるApollo Cityは、5,000ヘクタールを超える超大型プロジェクトであり、2025年にフェーズ1の着工が予定されています。
本格的な利益貢献は2027年以降が見込まれていますが、Vinhomesは一部の区画を外部パートナーに販売することで、2025〜2026年にも収益の一部を先行して計上する方針です。
これは、従来の「販売→建設→引き渡し→収益認識」という単線的なモデルから、複数の利益認識ポイントを持つ多層的なビジネスモデルへの移行を意味しています。
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まとめ・株価予想(独断)
これまでに例を見ないスケールで開発が進むRoyal Island、Wonder City、Apollo Cityはいずれも、住まいや商業施設だけでなく、教育、医療、公共交通、自然と調和した生活空間までも包括した「都市まるごと」のプロジェクトです。
それは、かつて国が描いていた理想の都市像を、民間の力で先回りして現実化する営みでもあります。
2025年、Vinhomesは販売済みの大型案件から確かな利益を積み上げる一方で、次の都市づくりに向けた種まきを着実に進めています。一見すると売上の成長は鈍化しているようにも見えますが、その裏では、利益構造を柔軟に変え、新しい都市価値をつくる準備が進んでいます。
指標的にもチャンスは十分ある企業かと思いますので、狙っていくのも面白いと思います。
PERの5年平均が6.9ですが、業界平均をとって、PER12で評価しました。
今期のEPS予想から計算した、予想株価は90,000ドンです。

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