2026年1月、ベトナムの今後5年を決める最重要イベント「第14回共産党大会」がついに閉幕しました。
ようやく「次のリーダー」と「国の方向性」がクリアになりましたね。
今回は、現地報道や第一生命経済研究所のレポートなどを深掘りしつつ、今回の人事がベトナム経済、そして私たちのポートフォリオにどう影響するのかを解説していきたいと思います。
結論から言うと、今回の体制は「治安維持による盤石な安定」と「経済プロフェッショナルによる急成長」のハイブリッド型です。
トー・ラム体制の確立:絶対的リーダーの誕生
まず、最大のニュースはトー・ラム書記長(To Lam)の再任です。

公安(警察・治安)畑出身の彼は、これまで「燃える炉(Burning Furnace)」と呼ばれる反汚職運動を指揮してきました。今回の党大会で彼がトップに留まることが確定したことで、ベトナムの政治的な不安定要素はほぼ払拭されたと言っていいでしょう。
実務レベルでも大きな動きがありました。 現職のルオン・クオン国家主席とファム・ミン・チン首相は、ともに党の最高指導部である政治局員から外れており、次の国会で退任する見通しです。
国家主席には、トー・ラム書記長の兼任の可能性もあり、今まで以上に強力なリーダーシップを発揮し、意思決定のスピードが上がり、汚職が一掃されることによる透明性の向上が期待できます。
政治局員の人事:公安と実務家のハイブリッド
国の最高指導部である「政治局員」19名の顔ぶれも刷新されました。
構成を見てみると、非常に分かりやすい特徴があります。
出身母体別の構成
それは、「守りの公安・軍」と「攻めの経済実務家」の分業です。
- 公安・軍出身者(7名): 政権の安定、治安維持を担う最大勢力。
- 経済・実務家グループ(7名): 経済政策、外交、主要都市の運営。
- 党・国家機関グループ(5名):党の組織運営や、国会、司法などを担当。
治安・不正には絶対の目を光らせつつ、経済や実務に詳しいメンバーをバランスよく入れているのは注目です。
地域別の構成
レポートにもあった通り、バランスは北部が圧倒的です。
- 北部:9名(約半数)
- 中部:5名
- 南部:5名
【ここが重要】「フンイエン省(Hưng Yên)」への集中
単に「北部が多い」だけでなく、最高指導者であるトー・ラム書記長の出身地「フンイエン省」出身者が、中枢ポストを占めているのが最大の特徴です。
新首相候補 レ・ミン・フン氏は「埼玉大卒」の知日派

現職のファム・ミン・チン首相は退任する見通しとなり、後任として最有力視されているのが、中央組織委員長のレ・ミン・フン(Le Minh Hung)氏です。
彼の経歴は、私たち日本株・ベトナム株投資家にとって非常に魅力的です。
- 元・国家銀行(中央銀行)総裁: 40代で総裁を務めた金融のプロ。
- 知日派のエリート: 日本の埼玉大学大学院で経済学修士を取得。
前首相が公安出身だったのに対し、次は「金融と経済の言葉がわかるテクノクラート(技術官僚)」が舵取りをすることになります。
インフレ抑制や為替の安定、そして日本からの投資呼び込みにおいて、これほど心強い人事はありません。
「南部の救世主」トラン・ルー・クアン氏への期待

もう一人のキーマンが、トラン・ルー・クアン(Tran Luu Quang)氏です。
彼は、行政手続きの停滞で苦しむ経済都市・ホーチミン市の新しい党書記に就任する可能性があります。
彼は南部(タイニン省)出身でありながら、北部の港湾都市ハイフォンを急成長させた実績を持ちます。
「南部の事情を知り、北部のやり方で成功させた男」がホーチミン市に戻ってくることで、止まっていた地下鉄工事や不動産開発が再び動き出すことが期待されています。
注目すべき「国策銘柄」とエリア

では、この新体制で恩恵を受けるのはどこか?
キーワードは、トー・ラム書記長の故郷である「フンイエン省(Hưng Yên)」です。
リーダーの出身地に予算やインフラ投資が集中するのは、ベトナム(というよりアジア全体)の政治の常です。
- KBC (Kinh Bac City): トランプ・オーガナイゼーションとの15億ドル規模のプロジェクトをフンイエン省で進めています。米中バランス外交の象徴的な銘柄です。
- VHM (Vinhomes): 同省で超巨大な都市開発(Ocean Park 2&3)を展開中。もはや「ハノイの隣町」ではなく、新たな都心を作っています。
- HPG (Hoa Phat Group): 鉄鋼だけでなく、実はフンイエン省の大地主(工業団地)でもあります。

昔行ったことありますが、街もすっかり変わっているようですね。
今後のスケジュールと投資戦略
最後に、今後のタイムラインを確認しておきましょう。
- 2026年1月: 党大会終了(党の人事決定)※今回
- 2026年3月: 総選挙(予定)
- 2026年5月: 新しい国会で、首相・国家主席が正式就任
現在は「内定」の段階で、正式な就任は5月になります。
これから春にかけて、新体制の具体的な政策が見えてくる時期です。
「10%成長」という大きな旗印と、「知日派の実務家首相」という強力なエンジン。
一時的な調整局面はあるかもしれませんが、中長期的なベトナムの成長ストーリーは、今回の党大会でより強固なものになったと言えそうです。

3月には、FTSEのベトナム市場、新興国格上げも決定される予定です。

ベトナム政治・経済から眼が離せませんね。





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