ベトナム政変ー「反汚職」は独裁への道か

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ベトナムは、ベトナム共産党の1党体制としえ、比較的安定した政治体制の下で経済成長を遂げてきた国です。しかし、最近のトップの連続辞任劇により、国内の政治情勢が不安定化しています。

特に注目すべきは、序列9位だったトー・ラム氏が急速に国家主席の座に就いたことです。

この事態は、ベトナムの政治において異例と言えます。

2024年7月には、13年間にわたりベトナム共産党書記長を務めたグエン・フー・チョン氏が80歳で逝去しました。彼の死去の前日、トー・ラム氏は暫定的に書記長の職務を引き継ぎ、2024年5月にはすでに大統領にも選出されていたため、国家の最高指導者としての役割を正式に担うこととなりました。

この記事では、ベトナムで起こっている政変をまとめてみたいと思います。

レタントン
レタントン

投資家目線でも、非常に興味深い内容となっています。

そして誰もいなくなる ベトナム「反汚職」は独裁序曲か(日経新聞へリンク)

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ベトナムの反汚職運動とは

ベトナムの反汚職運動は、1986年に開始された「ドイモイ(刷新)」政策をきっかけに、経済成長とともに顕在化した汚職問題への対応として発展してきました。

ドイモイによって市場経済へと移行したベトナムは、多額の外国からの投資や政府開発援助(ODA)を受け入れるようになり、経済が急速に成長しましたが、それに伴い汚職行為も目立つようになりました。

グエン・フー・チョン党書記長

2003年にベトナムは国連腐敗防止条約に加盟し、2005年には汚職防止法を制定しました。この頃から、汚職撲滅の取り組みが本格化しました。しかし、国営企業ビナシンの破綻(2010年)を皮切りに、政府高官を巻き込む大規模な汚職が次々と発覚し、問題はさらに深刻化していきました。

2011年、グエン・フー・チョン氏が党書記長に就任し、「禁止区域も例外もない」として大規模な反汚職キャンペーンを開始し、ベトナムの政治エリート層を含む多くの汚職事件が捜査されました。

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2023年からの幹部の解任劇

ベトナムでは、近年反汚職運動が急激に進展し、それに伴い多くの高官が辞任や解任に追い込まれる事態が発生しています。

この背景には、汚職対策だけでなく、党内の権力闘争や指導部の再編成といった複雑な要素が絡んでいます。

ベトナム主要政治家の辞任・解任時期と理由

名前役職辞任/解任理由
グエン・スアン・フック前国家主席2023年1月新型コロナ禍に関連した汚職事件の責任
ボー・バン・トゥオン前国家主席2023年3月汚職事件の監督責任
ブオン・ディン・フエ前国会議長2023年以降反汚職運動の一環で更迭
チュオン・ティ・マイ前書記局常務2023年汚職関連の監督責任
マイ・ティエン・ズン前政府事務局長2023年政府関連汚職事件

2023年には、国家の元首であるグエン・スアン・フック前国家主席やボー・バン・トゥオン前国家主席を含む多くの高官が辞任・解任される事態が相次ぎました。

これらの辞任や更迭は、COVID-19関連の汚職事件やそれに伴う監督責任の不備が原因とされています。特に、政府によるCOVID-19対策やワクチンの調達に関する不正行為が問題視され、140人以上の政府高官が逮捕されました。

1. グエン・スアン・フック前国家主席の辞任

グエン・スアン・フック前国家主席

フック氏は、COVID-19関連の汚職事件で最も大きな責任を問われました。彼の辞任は、汚職事件への厳格な対応と、党内での責任追及の一環として行われたもので、反汚職運動の厳しさを象徴しています。

2. 他の高官の辞任・解任

他にも、ボー・バン・トゥオン前国家主席、ブオン・ディン・フエ前国会議長、チュオン・ティ・マイ前書記局常務、マイ・ティエン・ズン前政府事務局長など、多くの高官が汚職関連の監督責任を問われ辞任・解任されています。これらは、党の指導層を含むあらゆる階層に汚職が広がっていることを示しており、党内の浄化が急務であるという認識が高まっています。

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ベトナムで何が起こっているのか

ベトナムの反汚職運動は、単なる汚職撲滅を超えた権力闘争の側面を持っています。多くの高官が辞任に追い込まれた背景には、党内での勢力再編と権力争いが絡んでいます。汚職摘発が進む中で、政治的ライバルや反対勢力が排除され、権力を集中させる動きも見られます。

トー・ラム新書記長

特に、2024年にはトー・ラム氏が共産党書記長として権力を握り、反汚職運動をさらに強化する意向を示しています。彼のリーダーシップの下、腐敗を一掃するという名目でさらなる捜査が進むことが予想されますが、この動きは同時に権力闘争をさらに激化させる可能性があります。

2021年の党大会後に発足したベトナム共産党指導部とその後(日経新聞より)

2021年発足時の4柱

まとめ

ベトナムはこれまで、共産党による1党支配のもと、安定した政治体制を維持しながら経済成長を遂げてきました。しかし、近年の反汚職運動の加速とともに、党内での高官の辞任・解任が相次ぎ、政治情勢に変化が見られています。

ベトナムの政治は、反汚職運動とそれに伴う指導部の変化により、新たな局面を迎えています。これらの動きは、国内の汚職問題解決に向けた一歩であると同時に、党内での権力闘争や政治的不安定化の兆しとも言えます。投資家にとっては、これらの動向が経済政策や市場環境に与える影響を注視することが重要です。

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