今回は成長著しい東南アジアの中で、ASEAN5の国々の2022年度のGDP・経済成長率を比較して、各国の経済状況・今後を見ていきたいと思います。
成長著しいアジア各国は、ASEANという11か国からなる共同体を作り、互いに競いながらも、協力しあい、大きな成長を遂げてきています。
特にASEAN5と呼ばれるマレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムの経済成長は著しく、これらの国への投資が、長期的にみて、大きなリターンを呼ぶと思います。
2021 年半ば以降、ASEANでは新型コロナウイルス「デルタ株」が蔓延し、2021 年 7-9 月期は、各国の内需外需がこの影響を受けました。
個人消費の落ち込みが特に大きかったのはベトナムであり、サプライチェーンが寸断されたことで、輸出への影響は、ベトナム、マレーシア、タイで大きな影響を出しました。
2022年早期に経済を復調させていくのは、どの国か、見ていきたいと思います!
ASEANは、2030年に向けて堅調な成長が期待できる
労働人口増加と生産性向上
ASEAN諸国は、労働力人口の増加と、インフラ資本の蓄積、人的資本の向上を通じて、生産性向上の恩恵が今後も見込まれるため、2030年まで4%程度の成長を続け、一人当たり所得は1万ドル弱にまで上昇すると予測されています。
現時点で ASEANの人口は、世界人口の 1 割弱となる 6.3 億人を占め、2030年には 7.3 億人にまで増加する予測が出ています。
労働力人口もASEAN 人口の約 9 割を占める主要 5 カ国(ASEAN5)の労働力人口は、2030 年には 3.3 億人まで増加していきます。
各国の出生率は、緩やかな低下傾向になっていますが、一定程度の出生率を保っているを中心に人口の増加が続くことが予想されています。
フィリピン(3.0)、インドネシア(2.3)、ベトナム(2.05)、タイ(1.4)
※タイは出生率が日本を下回るなど、少子化に苦しんでいます。
2020年代半ばには日本を追い越す
ASEAN5の実質GDP成長率は、2016-20年+4.8%、2021-25年+4.3%、2026-30 年+3.8%と予測し、緩やかに減速しつつも成長を続けていくと思われます。
上記の経済成長率を前提とすれば、2020 年代半ばに、ASEANの名目GDPの規模は、日本を追い越すことになり、2030 年に向けて ASEAN の世界におけるプレゼンスはますます拡大していくと考えられます。
2022年経済成長予想(アジア開発銀行、IMF)
ASEAN GDP経済成長率、第1位は?
ベトナムです。
2022年のASEAN5の経済成長予測は、アジア開発銀行は全体で5.0%、IMFは5.5%と予測しています。両者とも、ベトナムをNo1としており、それぞれ6.5%、6.6%の成長を予測しています。続いて、マレーシアも、6%超えと高い伸び率となっており、ついでフィリピン、インドネシアがつづく形となっています。
2022年の予想GDP成長率予想は、以下のようになっています。
国 | ADO予測 | IMF予測 |
---|---|---|
ベトナム | 6.5% | 6.6% |
マレーシア | 6.1% | 6.0% |
フィリピン | 5.5% | 6.3% |
インドネシア | 4.8% | 5.9% |
タイ | 3.9% | 4.5% |
東南アジア全体 | 5.0% | 5.5% |
経済回復への流れ
各国とも、ワクチン接種が進んでおり、感染状況はピークを過ぎ、落ち着いてきています。これを受けて 10 月以降、各国は行動制限の緩和を進めています。今後は、国内の経済活動が活発化するとともに、国内外の移動も本格化することが期待できます。
最も回復が早いのは、世界的に需要が底堅い電子機器を中心とした製造業で、マレーシアやベトナムの景気回復が予測できます。また、資源への需要の高まりもあり、インドネシアの資源関係も堅調となると思われます。一方、タイは自動車産業が中心の製造業のため、半導体不足から回復が遅くなることも懸念されています。フィリピンは、コールセンターを中心としたビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業は成長を後押しすると思われます。
これに対して、旅行産業の本格的な回復は 2022 年後半まで待たなくてはならず、観光産業の強いタイの景気回復スピードはそれまで緩やかなものにとどまるとされています。
リスク
- COVID-19のパンデミック(新しい亜種の出現を含む)
- 世界的なサプライチェーンの混乱など(金融不安、地域の緊張)
- 気候変動に関連した異常気象
ASEANに限らないリスクとして、COVIDパンデミックの再発が考えられます。国によってはワクチン接種率が低く、これらの要因で再度パンデミックが発生する可能性があります。また、アジアの発展には、気候変動に強い持続可能な食糧生産と農業システムが不可欠と報告されています。
2022年の見通し
【ベトナム】2022年もASEAN経済を引っ張るけん引役に期待
製造業の回復が早期に行われ、早期に雇用回復、消費も戻してくる
電子機器産業の競争力が高いベトナムからの輸出は、2021 年の年末にかけて加速する見込みで、同産業が成長ドライバーとなると考えられます。
さらに輸出企業を中心として業績の回復が進めば、雇用・所得環境の改善につながりやすく、2022 年前半頃には、個人消費もコロナ禍前の水準にまで戻る可能性が高いとされています。
資源系では、鉄鋼関係の輸出が増えていくことが予想されています。
海外からの投資が復活
さらに、新型コロナ禍で冷え込んだ対内直接投資が足元で回復の動きを見せており、2022年にかけてさらに加速することが見込ます。外需が加速するなかで、内需が安定する形で引き続き強い経済が期待できます。
引き続きベトナム経済には期待でいっぱいです。
【マレーシア】輸出産業を先頭に景気回復に向かう
電子機器産業の輸出回復
ベトナム同様、 電子機器産業の輸出が2021年の年末から2022年にかけて加速する見込みです。特に米国が景気刺激策を打ったことから、米国向けの輸出が増えていくことが予想されています。
政府の個人消費刺激策
新車の売上税減免措置の延長や給与補助金制度の再導入といった追加対策とともに、今後の個人消費の追い風となると考えられます。
公共投資
公共投資等に割り当てられる 2021 年度の開発支出予算は前年度補正予算対比+39%の増加が予定されており、インフラ投資が景気の押し上げに寄与すると見込まれます。
ASEAN5の中では安定度が高いマレーシアです。
【フィリピン】景気は持ち直すが回復ペースは鈍い
公共投資の増大
フィリピン経済は、外需依存度が低い分、今後の景気けん引役は公共投資が中心となる見込みです。2021 年度のインフラ整備計画は、前年度補正予算対比+41%の予算が割り当てられており、インフラ投資の拡大で内需を押し上げていくと考えられいます。
これが、雇用・所得環境の改善につながり、消費に波及していく展開が予想されています。
大統領選挙
2022 年5 月には大統領選挙が控えていることもあり、先行きも財政拡大による景気刺激策が続くと見込まれます。
大統領選挙により、景気の良い話が聞こえてきそうです。
誰が大統領になるかも、大注目のポイントです。
【インドネシア】インフラ投資拡大・資源輸出による経済回復
インフラ投資の拡大
インフラ投資の拡大が内需を押し上げ、成長率を高めていく見通しである。2021 年度のインフラ整備向け予算は、前年度比+47%増の 414 兆ルピア(約 3 兆円)へと大幅に増額している。
「2020~24年の国家中期開発計画」では、総額 2,085 兆ルピア(年平均で GDP比約 2.7%)のインフラ投資が計上されており、2022 年以降も多くの公共事業が実施される可能性がある。
インフラ投資は雇用対策にもなり、所得環境の改善が消費の持ち直しにも波及していくことも期待されよう。
資源
欧米での経済活動の本格化と国際的な資源高の影響で、2022 年も堅調と予想され、インドネシアからはパーム油やベースメタル、石炭、天然ガスが輸出されてきます。
石炭に関しては、脱炭素化への動きが強まる中、長期的には輸出が伸び悩む可能性がありますが、現状では世界的なエネルギー不足により石炭への需要が高まっていることや、脱炭素に遅れているインドでは引き続き需要が見込めることから、少なくとも 2022年中に輸出が大きく減少する可能性は少ないとみています。
特に、輸出に占める資源の割合が高いインドネシアでは、同セクターが成長ドライバーとなると考えられています。
資源国家であるインドネシアにも注目していきたいですね。
インドネシア全体の成長に投資するんだったら、投資信託がお勧めです。
【タイ】景気の回復傾向が強まるのは 2022年後半
自動車産業の回復が遅い
製造業に強みを持つタイですが、自動車搭載用半導体の供給不足が解消されるタイミングを待たなければならないため、輸出の回復に時間がかかると予測されています。タイ工業連盟自動車部会は、供給不足が 2022年を通して続く懸念をしめしています。
その点で、少なくとも 2022 年前半は、半導体の川上産業の集積があるマレーシアと比べて、タイの製造業は緩やかな回復にとどまると予想されています。
観光サービス業
コロナ禍が収束に向かうと見込まれる 2022 年は観光サービス輸出の持ち直しを受けて、景気の回復基調が強まると予想されています。
自由に観光旅行にいけるのは、
2022年の後半になりそうと予測しているようです。
まとめ
今回は、ASEAN5の国々の2022年度のGDP・経済成長率を比較して、各国の経済回復の道筋を書いてきましました。IMFやADBのレポートから各国の状況をまとめました。
ベトナム経済が強いのは引き続きですが、リスクも考えて、他国にも分散投資することも検討していけると思っています。
2021年は厳しい年でしたので、2022年は各国争いのない素晴らしい年になってほしいと思っています。
それでは
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