今、ベトナム株式市場において、2026年9月に起こる可能性のある非常に大きなイベントが注目されています。
それは、世界的な株価指数を提供している会社「FTSE Russell」が、ベトナム市場の位置づけを現在の「フロンティア市場」から「新興市場」へと格上げするという動きです。
なぜこれが重要なのでしょうか?
「新興市場」に格上げされれば、世界中の巨大な投資ファンド(プロの投資家たち)が、ルールとしてベトナム株を買い始める必要が出てくる可能性があります。これは 、野球のマイナーリーグからメジャーリーグに昇格するようなもので、世界中のお金(投資資金)がベトナム市場に流れ込みやすくなると考えられているのです。
この記事では、この「FTSE格上げ」とは一体何なのか、なぜこれほど注目されているのか、そして、もし本当に資金が流入するとしたら、どのような銘柄が注目される可能性があるのかについて、SSIリサーチの最新レポートを基に、分かりやすく解説していきます。
投資は自己責任ですが、この情報が、あなたのベトナム株投資戦略を考える上での一つのヒントになれば幸いです。

待ちに待った新興国市場への昇格です!
FTSE Russellが「新興市場」への格上げを正式発表!

世界には、株式市場を「先進国市場」「新興市場」「フロンティア市場」といったグループに分けて評価している会社があります。その中でも有名なのが、イギリスの「FTSE Russell」です。
現在、ベトナム市場はこのFTSEによって「フロンティア市場」というグループに入れられています。
これは、「将来有望だけど、投資家にとってはまだ少しハードルが高い市場」といったイメージです。
しかし、その状況が変わります。
FTSE Russellは、ベトナム市場を一つ上のランクである「新興市場」へと格上げすることを、すでに正式に発表しました 。
そして、その正式な昇格日(効力発生日)も、2026年9月21日と具体的に定められています 。
ただし、「最終確認」が残っている
FTSEは、2026年3月に、ベトナム市場が新興市場としてスムーズに機能するかどうかの最終チェック(中間評価)を行う予定です 。
ここで、例えば海外の投資家が問題なく株を売買できるか、といった技術的な側面などが最終確認されます 。
このチェックを無事に通過すれば、予定通り9月に正式な「新興市場」メンバーとなるわけです。
格上げで期待される「約16億ドル」の資金流入
| ETF Fund | 参照インデックス | 純資産総額 (百万ドル) | FTSE格上げ時のベトナム比率 (%) | 推定流入額 (百万ドル) |
| Vanguard Total International Stock ETF | FTSE Global All Cap ex US | 546,100 | 0.11% | 591.51 |
| Vanguard Institutional Total International Stock Market Index Trust II | FTSE Global All Cap ex US | 284,900 | 0.11% | 308.59 |
| Vanguard FTSE Emerging Markets ETF | FTSE Emerging Markets All Cap China A | 138,300 | 0.43% | 590.14 |
| Vanguard FTSE All-World ex-US Index Fund | FTSE All-World ex US | 74,200 | 0.12% | 87.80 |
| Vanguard Total World Stock ETF | FTSE Global All Cap | 71,100 | 0.04% | 28.60 |
| Vanguard FTSE All-World UCITS ETF | FTSE All-World | 48,530 | 0.04% | 20.88 |
| 合計 (Total) | 1,163,130 | 1,627.53 |
もし予定通り格上げが実現すれば、世界中の「新興市場に投資します」と決めている投資信託(ETFなど)は、ルールとしてベトナム株を一定量、買わなければならなくなります。
これは、投資家個人の「好き嫌い」ではなく、決められたルールに従う「機械的な買い」です。
ベトナム現地の証券最大手「SSIリサーチ」は、この格上げによって、こうした機械的な買いによって約16億ドル(日本円で2,000億円以上!)もの新しいお金がベトナム市場に流れ込む可能性がある、と予測しています 。
すでに昇格は発表されているものの、最終確認を経て実際に巨額の資金が動き出す「本番」がこれから訪れる。
これが、今回の「格上げ」が依然として大きな注目を集め続けている理由なのです。
何を買うべきか?資金流入が期待される銘柄の考え方
では、その約16億ドルは、どの銘柄に向かうのでしょうか? インデックス(指数)に採用される銘柄は、主に以下の基準で機械的に選ばれると考えられます。
- 時価総額(会社の規模)
- 流動性(売買の活発さ)
- 外国人保有枠(FOL)の空き
ベトナム株の取引経験者ならご存知の通り、この「FOL(外国人保有枠)」が厄介な問題です。
いくら魅力的な大型株でも、すでに外国人枠が上限に達していれば、海外ファンドは買いたくても買えません。
SSIリサーチによる「推定資金流入額」
SSIリサーチは、このFOLや浮動株比率なども考慮した上で、「格上げ時に実質的に流入する資金量」を銘柄ごとに試算しています。
これは、私たちが「どの銘柄がイベントの恩恵を受けやすいか」を考える上で、非常に強力なヒントとなります。
【FTSE格上げ 推定資金流入額(上位抜粋)】
- VIC(ビングループ):約 4億2,543万ドル
- VHM(ビンホームズ):約 1億9,482万ドル
- HPG(ホアファット・グループ):約 1億297万ドル
- MSN(マサングループ):約 1億61万ドル
- SSI(SSI証券):約 8,206万ドル
- VNM(ビナミルク):約 7,872万ドル
- VIX (VIX証券): 約 7,749万ドル
- VCB (ベトバンク): 約 6,877万ドル
- VND (VNDIRECT証券): 約 4,150万ドル
- VRE (ビンコム・リテール): 約 4,036万ドル
このリストは、あくまで「パッシブ資金(機械的な買い)」が向かいやすい候補を示したものであり、これらの銘柄の購入を推奨するものではありません。
しかし、ビングループ関連だけでなく、鉄鋼のHPG、消費財のMSN、そして市場の活況で恩恵を受ける証券会社(SSI)なども、大きな資金流入が見込まれる点は注目に値します。
「割安さ」というもう一つの視点

イベント期待だけで買われている銘柄は、高値掴みになるリスクがあります。
そこで、市場全体の「割安さ」も確認しておきます。
SSIリサーチは、2026年のVN-Indexの予想P/E(株価収益率)を約12倍と試算しています 。
これは、過去10年間の平均である14倍と比較しても、低い水準です 。
これは、ベトナム市場が「格上げ」というPER(株価収益率)が上昇する可能性のあるイベントを控えているにもかかわらず、まだ過熱感がない状態、と解釈することもできます。
「企業の業績成長(EPS成長)」と「市場の再評価(PER上昇)」の両面から期待できるのが、現在のベトナム市場の魅力的な点かもしれません。
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スケジュール:いつ買うべきか
イベント投資の基本的な考え方は「先回り」です。 FTSEによる格上げのタイムライン(予定)を確認しましょう。
- 2026年3月:最終評価・確認期間
- 2026年9月:格上げの正式実施
約16億ドルのパッシブ資金(ETFなど)が実際に動意づき、機械的に買いに来ると予想されるのは、2026年9月の「実施日」前後です。
このスケジュールを踏まえると、一つの戦略として「ファンドが買いに来る前にポジションを構築し、イベント(機械的な買い)が起こるタイミングで利益確定を狙う」という考え方があります。
もちろん、市場は予測通りに動かないことも多々ありますが、こうした明確なスケジュールと需給イベントがあるのは、戦略を立てる上で大きなアドバンテージになると言えるでしょう。
まとめ
この記事では、2026年9月に予定されるFTSE格上げイベントと、それに伴う約16億ドルの資金流入予測 、そしてSSIリサーチが注目する銘柄リストについて解説しました。
世界のプロが買いに来る可能性のあるこのイベントを、今度はあなたが「先回り」する番です。 まずはご自身の監視リストに注目銘柄を加え、戦略を練ることから始めてみてはいかがでしょうか。

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