ベトナムの航空業界は、新型コロナウイルスの影響からの回復が進み、国際線の需要増加と貨物輸送の拡大を背景に成長を続けています。
特に、政府による空港インフラの整備や、観光業の回復が業界の発展を後押ししており、今後の成長が期待される分野です。
本記事では、2024年の業界動向を振り返り、2025年に向けた展望を解説します。
2024年の振り返り

旅客・貨物の動向
2024年の航空業界は、国際線の回復と国内線の低迷が対照的な動きを見せました。
- 総旅客数:1億900万人(前年比-3.5%)
- 国際線:4,100万人(+24% YoY)→ 欧米・アジアからの観光需要回復
- 国内線:6,800万人(-15% YoY)→ 航空機の整備遅れ・リストラの影響
- 貨物取扱量:1,500万トン(+19% YoY)
- 国際貨物の成長が主因(輸出入の回復が牽引)
- 海運の遅延や価格高騰により航空貨物の競争力が上昇
航空インフラの課題

ベトナムの主要空港は過密状態に直面しており、業界の成長を妨げる要因となっています。
- タンソンニャット国際空港(ホーチミン):設計容量2,800万人 → 実際の利用4,100万人
- ノイバイ国際空港(ハノイ):設計容量2,500万人 → 限界ギリギリの利用
- カムラン、ダナン、フーコック空港も限界に近い
これに対し、政府は2030年までに空港数を30に増やす計画を進めており、2025年にはロンタイン国際空港(ホーチミン郊外)の第一期が開業予定です。
また、タンソンニャット空港T3ターミナルが2025年5月に完成予定で、国内線の混雑が緩和される見込みです。
航空関連企業の業績
航空サービス企業や貨物取扱会社は、国際線と貨物の回復を追い風に大きく成長しました。
- 業界全体の売上成長率:+20〜50%
- 利益率の向上:国際線比率の上昇により収益性が改善
ただし、航空会社は二極化しています。
- ベトナム航空(HVN)は国内線の低迷が業績に影響。
- ベトジェット(VJC)は国際線の拡大を積極化し、LCC市場で成長を継続。

空港の混雑緩和は待ち遠しいですね。
2025年展望
2025年は新たなインフラ建設など進み、航空需要は伸び続けるものと思われます。

旅客市場
2025年は国際線の回復が主導する形で成長を続ける見込みです。
- 国際旅客数の増加
- 政府の観光振興策(電子ビザ・多回入国許可)
- 欧米・オーストラリアからの訪問者増加
- 国内線の回復
- 整備が完了した航空機が順次復帰
- GDP成長と観光需要の拡大
貨物市場
- 前年比10〜15%の成長予測
- 貿易協定(FTA)による輸出入拡大
- 海運コストの高止まりによる航空貨物の競争力向上
- FDI(海外直接投資)の増加による需要拡大
航空インフラ整備

政府の空港拡張計画が加速し、航空業界の発展を後押しします。
- ロンタイン国際空港(ホーチミン郊外):2025年の早期開業を目指す
- タンソンニャットT3:2025年5月完成予定で、国内線の混雑緩和
- ノイバイ空港T2の拡張:ハノイの国際線対応能力を強化
航空業界の会社紹介
今回は、売上規模から10社をピックアップしています。
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
データは2024年12月末時点のものです。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
ACV | ベトナム空港社 | D | B | B | B |
HVN | ベトナム航空 | F | B | B | B |
VJC | ベトジェットエア | F | B | C | C |
SCS | サイゴン貨物サービス | B | B | C | B |
NCT | ノイバイ貨物サービス | C | C | C | C |
SGN | サイゴングランドサービス | C | C | C | C |
AST | タセコエアーズ | D | C | B | B |
VNF | ビナフレイト | C | B | C | C |
CIA | カムラン国際空港サービス | D | C | C | C |
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。

貨物系(SCS・NCT)は高ROEながらPERが抑えめで投資妙味があり、LCCのVJCや空港運営のACVは成長期待が高く評価されていることがわかります。
2024年売上・利益ランキング

SCSの利益率の高さが光っています。旅客航空はベトナム航空が赤字が続いている一方で、VJCが利益を確保しているのも注目ポイントです。
EPS、PER比較

配当利回りランキング
2024年度の配当実績です。Trading View データから取得しています。
昨年の配当実績÷年末の株価のため、今後の予想利回りではありません。
Ticker | 社名 | 配当(%) |
---|---|---|
SCS | サイゴン貨物サービス | 7.42 |
NCT | ノイバイ貨物サービス | 6.93 |
VNF | ビナフレイト | 4.09 |
SGN | サイゴングランドサービス | 2.83 |
会社個別の分析
サイゴン貨物サービス(SCS)

SCSはホーチミン・タンソンニャット空港の貨物取扱会社で、ベトナム航空貨物市場のリーダー的存在。
利益率は驚異の70%以上と非常に高い。
カタール航空との新契約や国際貨物需要の拡大により、今後の売上・利益の成長が期待される。航空旅客と異なり、貨物市場は景気変動の影響を受けにくく、安定した収益が見込めるのも強み。
さらに、タンソンニャット空港の拡張計画により貨物取扱量の増加が見込まれ、長期的な成長も見込めます。
ベトナム空港公社(ACV)
ベトナム最大の空港運営企業で、全国の空港管理を担当
ロンタイン国際空港(2026年開業予定)やタンソンニャットT3拡張プロジェクトの恩恵を受け、今後の収益成長が継続されます。
ベトナム政府のインフラ投資計画の中心企業であり、長期的な安定成長が見込める優良企業です。
ベトジェットエア(VJC)
ベトナム最大のLCC(格安航空会社)で、国内外の路線拡大を積極的に進めています。
ベトナムの観光業が成長する中、格安航空市場の需要は拡大し続けるため、今後の成長ポテンシャルは非常に大きいです。
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まとめ
2025年のベトナム航空業界は、国際旅客の増加と貨物輸送の拡大を軸に成長を続ける見通しです。
政府主導の空港インフラ整備が進み、新ターミナルや新空港の開発が業界全体の発展を支える要因となります。
国際線の回復に伴い、航空サービスや貨物関連企業の需要も高まり、安定した成長が期待されます。
今後も観光産業の発展や貿易の拡大とともに、航空業界全体の成長が続くことが予想されます。
引き続き、インフラ整備の進展と市場の動向を注視しながら、今後の展開を見守っていきたいと思います。
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