今回は、2025年度のベトナムIT&情報通信業界各社の分析および比較をしていきたいと思います。
2024年のIT・通信業界は、AI技術の進展、クラウドサービスの拡大、そして5G通信の普及が市場の成長を牽引しました。
特にベトナムでは、政府主導のデジタル化施策やデータセンター(DC)市場の成長が注目され、FPTをはじめとする主要企業が積極的に投資を拡大しました。
また、通信インフラの整備が進む中で、5Gの商用展開に向けた取り組みが加速し、データ消費の拡大に伴う電力供給問題や環境負荷への対応が業界全体の課題となっています。
本記事では、2024年の業界動向を振り返りつつ、2025年の展望について考察していきます。
2024年の振り返り

AIとクラウドが成長を牽引
2024年は生成AI(Generative AI)の普及により、データセンター(DC)投資が加速しました。
ベトナム政府はNvidiaと提携し、AIデータセンターの設立を推進し、FPTはAI Factoryを設立してAI関連ビジネスを強化しました。
クラウド市場も急成長し、FPTやViettelがクラウドインフラを拡充。市場成長率は年間約30%と見込まれ、企業のデジタル化が加速しました。
データセンター(DC)市場の拡大
ベトナムのDC市場は2024年に約7億USDに達し、2028年には10.4億USDに拡大する見込みです。(CAGR 10.7%)。
FPT、Viettel、VNPT、CMC Telecomなどの企業が市場シェアを拡大し、DCの需要が急増しています。
ただし、AI技術の進化に伴う電力消費の増加が業界の課題となっています。
5G通信の普及と通信インフラの強化
ベトナム政府は5G周波数帯(3.56-4.00GHz)のオークションを実施し、Viettel、VNPT、MobiFoneが5Gネットワークの展開を推進しています。
CTR(Viettel Construction)は基地局建設を拡大し、通信インフラの強化を進めました。
5Gの普及はスマートシティやIoTの発展を後押しし、今後の成長に向けた重要な要素となっています。

2024年はベトナム経済を引っ張る存在となりました。
2025年の展望

AIとデータセンターのさらなる拡大
AIの普及が進み、データセンター(DC)の需要が引き続き増加しています。
特にAI専用DCの建設が加速し、電力供給問題が深刻化しています。
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展し、クラウドサービスの導入がさらに拡大すると予測されます。
5GとIoTの発展
5Gの本格展開により、スマートシティやIoTサービスが拡大しています。
ベトナム政府は2025年までに全国5G網の整備を目指し、スマートファクトリーや遠隔医療などの新たなビジネスモデルの発展が期待されます。
グリーンITと持続可能な成長
電力消費の増大に対応するため、再生可能エネルギーの活用が拡大しています。
企業はカーボンニュートラルを目指し、グリーンデータセンターの導入を推進しています。
環境負荷を低減する液冷技術やエネルギー効率化が注目され、持続可能な成長が求められる1年となるでしょう。
【電力業界の記事はこちら!】

2025年も期待の業界です!!
IT&情報通信企業の紹介
売上規模から9社をピックアップしています。
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング

成長性を見込まれて、勢いがある企業が多い印象です。
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
FPT | FPT情報通信 | D | A | B | B |
FOX | FPTテレコム | D | A | F | C |
VGI | ベトテル国際投資 | C | B | C | C |
CTR | ベトテル建設 | C | A | B | B |
CMG | CMC技術グループ | D | B | B | B |
ELC | 通信電子技術開発投資 | F | B | A | B |
ADG | クレバー・グループ | C | B | F | C |
ICT | テレコム・インフォマティック | C | D | D | C |
ITD | ティエンフォン技術 | D | D | B | C |
2024年の株価推移
2024年の株価推移です。

2024年のベトナムIT・通信業界では、VGI(ベトテル国際投資)が最も高い成長を記録し、一時300%超の上昇しました。一方、FPT(+82.27%)とFOX(+88.52%)CTR(+36.86%)も安定した成長を見せ、市場平均(VN-Index +12.37%)を大きく上回っています。

全体として強い成長を見せました!
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2024年12月末のものです。

ベトナムのIT業界ではFPTが市場の主力で、高ROEかつ高PERを維持しています。
ベトテル建設(CTR)も高収益性をキープしています。
FPTテレコム(FOX)はROEが高いがPERは低めで割安感あります。
ADGやICTは成長余地があるが市場評価は控えめです。
2024年売上ランキング
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。

FPTが圧倒的な売上と利益を誇り、FPTテレコム(FOX)やベトテル国際投資(VGI)も堅調な一方、ITDは赤字で利益率も低迷しています。
全体として、売上規模と利益率には大きなばらつきが見られます。
EPS、PER比較
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。

FPT情報通信(FPT)とベトテル建設(CTR)が高EPSを維持し、安定した配当(DPS)も確保しています。
VGIはEPSが低くPERが異常に高いため割高感があります。
配当
配当実績は下記のようになります。
Ticker | 社名 | 配当(%) |
---|---|---|
ICT | テレコム・インフォマティック | 3.45 |
CTR | ベトテル建設 | 2.07 |
FPT | FPT情報通信 | 1.22 |
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会社個別の分析
FPT情報通信【FPT】

FPTはベトナム最大のIT企業で、海外ITサービス、クラウド、AI、データセンターを柱に成長を続けています。
2025年はAI Factoryの拡大により、AI関連事業の売上が増加し、収益基盤がさらに強化される見込みです。
また、日本市場を中心に海外ITサービスの需要が拡大しており、今後も安定した成長が期待されます。
データセンター市場の拡大やDX推進も追い風となり、テクノロジー分野のリーダーとしての地位を確立しています。
Vitte建設【CTR】

CTRはベトナムの通信インフラ整備を担う企業で、5Gの全国展開計画の恩恵を受ける銘柄です。
政府の5G推進により基地局建設の需要が急増し、同社の業績拡大が見込まれます。
また、CTRは通信タワーのレンタル事業や電力設備の管理も手がけており、安定した収益基盤を確保しています。
加えて、IoTの普及やデジタル化の進展に伴い、スマートインフラ需要が高まり、長期的な成長が期待される企業です。
まとめ
ベトナムの情報技術(IT)および通信業界は、近年目覚ましい成長を遂げています。
2024年のベトナムIT・通信業界は、AI・クラウド・データセンター(DC)の成長と5Gインフラ整備が市場の主要テーマとなりました。
2025年は、AIの普及と5Gの全国展開が業界の成長を後押しする見込みです。
特に、FPTはAI Factoryを軸にDX推進、CTR(ベトテル建設)は5G基地局建設で恩恵を受けると予測されます。
持続可能な成長に向け、電力供給や環境負荷の課題も重要な視点となります。
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