今回は、2025年度の建設・公共インフラ関連企業の業界各社の分析および比較をしていきたいと思います。
ベトナム政府は2025年に公共インフラ投資を前年比36%増の900,000兆VND(約336億ドル)に引き上げ、GDP成長率8%以上を目指しています。
北南高速道路、ロンタイン国際空港、環状道路などの国家プロジェクトが加速し、関連業界への投資チャンスが広がっています。
本記事では、2024年の振り返りと2025年の展望、そして恩恵を受ける企業・業界について詳しく解説します。
2024年の振り返り
公共投資の進捗と課題

2024年の公共投資額は548,569兆VNDで、政府計画の72.9%を達成しました。
前年(589,202兆VND)と比べて減少し、計画通りの進捗とは言えませんでした。
その背景には、いくつかの課題がありました。
- 投資承認の遅れ:政府の承認プロセスが煩雑で、開始が後れ。
- 予算執行の遅延:地方政府への資金配分が遅れ、建設スケジュールが停滞。
- 土地収用の難航:住民の補償交渉が長引き、用地確保が進まない問題が発生。
- 建設資材の高騰と不足:資材価格が上昇し、一部工事がコスト増で延期。
建設業界の動向
2024年のベトナム建設業界は、政府の公共投資の遅れと不動産市場の低迷の影響を受けながらも、年後半から持ち直しました。
指標 | 2023年 | 2024年 | 変化 |
---|---|---|---|
建設業成長率 | +7.2% | +5.6% | 減速 |
不動産市場の影響 | 商業施設・住宅建設の停滞 | 公共インフラ投資でカバー | – |
人件費 | 上昇傾向 | さらに上昇 | 労働力不足 |
建設資材価格 | 変動あり | 上昇(鉄鋼+12%、アスファルト+20%) | コスト増 |
政府主導のインフラ投資が、2024年後半から建設業界を下支えしましたが、2025年には本格的な成長が見込まれます。
政策と投資環境
- 2025年1月施行の改正公共投資法・PPP法
- 投資承認プロセスの迅速化
- 民間投資の拡大(官民連携プロジェクトの促進)
- 政府のインフラ推進方針
- 公共投資を経済成長の中心に据え、2025年の予算執行を迅速化
2025年の展望

公共投資の拡大と新規プロジェクト

2025年の公共投資予算は82兆5900億VND(前年比30%以上増)に設定され、年初までに全体の89.7%の資金配分を完了する計画です。
これは、2024年の執行率の低さを踏まえたもので、政府は予算の迅速な執行を約束しています。
注目すべきプロジェクトとしては、以下が挙げられます。
プロジェクト | 予算規模 | 進捗状況 | 完成予定 |
---|---|---|---|
北南高速道路 | 14兆6990億VND | 一部開通済、2025年末にさらに開通予定 | 2026年全面開通 |
ロンタイン国際空港 | 33兆6630億VND | 主要工事進行中 | 2026年9月 |
ホーチミン環状3号線 | 7兆5378億VND | 進捗率13~45% | 2026年 |
ハノイ環状4号線 | 8兆8694億VND | 進捗率36.9% | 2026年第4四半期 |
南北高速鉄道 | 67億USD | 2025年に計画確定、2027年着工予定 | 2035年以降 |
ベトナム・中国接続鉄道 | 8.3億USD | 2025年に一部着工予定 | 2030年以降 |

これらのプロジェクトは、建設・資材業界への強い追い風となりそうです。
建設業界の動向
2025年は、政府の積極的なインフラ投資拡大により、建設業界にとって大きな成長の年となることが予想されます。
- 建設業の成長率が回復
- 2024年の5.6%成長から、2025年は7~8%の成長を見込む。
- 北南高速道路、ロンタイン空港などの大型プロジェクトが本格化。
- 人材不足と労働環境の変化
- 施工スピードを上げるため、外国人労働者の受け入れ増加が進む。
- 技能労働者の不足により、建設業の人件費がさらに上昇。
- 資材価格の安定化
- 2024年の急騰後、政府の価格調整策により鉄鋼・セメント価格は安定へ。
- ただし、原油価格次第ではアスファルト価格の変動が続く可能性あり。
建設&公共インフラ企業の紹介
売上規模から12社をピックアップしています。
企業紹介
社名 | Ticker | 事業内容 |
---|---|---|
ビナコネックス | VCG | 総合建設大手、北南高速道路・空港・橋梁プロジェクト受注 |
コテコンズ建設 | CTD | 民間・公共の建設プロジェクトを手掛ける大手建設会社 |
デオカ・グループ | HHV | BOT方式の高速道路・トンネル管理・建設 |
ホーチミン市インフラ投資 | CII | 道路、橋梁、水道事業を展開するインフラ投資企業 |
ビグラセラ | VGC | 建設資材メーカー、セメント・タイル・ガラス製品を供給 |
ハティエン1セメント | HT1 | ベトナム最大のセメントメーカー、インフラ工事向け供給増加 |
ビコストーン | VCS | 人工石材メーカー、建築・インフラ向け高級建材供給 |
ビンミンプラスチック | BMP | 建設用プラスチック配管製造、公共工事向け需要が拡大 |
タスコ | HUT | 高速道路の建設・運営、BOT(有料道路)事業展開 |
フータイグループ | PTB | 木材加工・建築資材メーカー、建設業界向けの事業強化 |
シエンコ4 | C4G | 道路・橋梁工事に強み、政府プロジェクトを多数受注 |
ペトロベトナムケミカル | PLC | 道路舗装向けアスファルト供給、政府公共工事の影響大 |
FiinTrade Rank
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
VGC | ビグラセラ | C | B | B | B |
HUT | タスコ | D | B | B | B |
VCG | ビナコネックス | C | B | B | B |
BMP | ビンミン・プラスチック | C | B | B | B |
VCS | ビコストーン | A | A | B | A |
CTD | コテコンズ建設 | C | D | B | C |
HHV | ハイバントンネル管理運営 | D | B | A | B |
HT1 | ハティエンセメント工業 | C | D | B | B |
CII | ホーチミン市インフラ投資 | F | C | B | C |
PTB | フータイ | B | A | C | B |
PLC | ペトロリメックス・ペトロケミカル | C | D | B | B |
C4G | シエンコ4グループ | C | B | B | B |
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2024年12月末のものです。

ハティエンセメント工業とペトロリメックス・ペトロケミカルはPERが高く、市場の期待も大きいですが、株価には割高感があります。特にハティエンセメント工業はインフラ整備の需要増により成長が期待されるものの、現在の評価を考慮すると慎重な判断が必要です。
シエンコ4やハイバントンネル管理運営はPERとROEのバランスが良く、中長期的な投資先として魅力的です。政府の公共事業受注が多いシエンコ4は特に成長が見込まれます。
ビナコネックスやホーチミン市インフラ投資はROEが低めですが、政府のインフラ投資が進む中で安定成長が期待できます。
売上ランキング
下記のグラフは、各社の2024年の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。

全体的に、業界の売上規模には大きなばらつきがあり、特に一部の企業が大きな売上を記録しています。タスコ(HUT)やビナコネックス(VCG)は売上が高いものの、利益率は低めとなっています。
これは、大規模な公共インフラプロジェクトに関わる企業が、収益性よりも受注規模の拡大を重視していることを示唆しています。
一方で、ビコストーン(VCS)やビンミンプラスチック(BMP)などの建設資材関連企業は、比較的高い利益率を維持しており、資材供給分野の収益性が高いことが分かります。
また、コテコンズ建設(CTD)やハイバントンネル管理運営(HHV)も一定の利益率を確保しており、事業の安定性が伺えます。
EPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
時価総額の高い順番に左から並べています。

配当
配当は各社下記のようになっています。Trading View データから取得しています。
Ticker | 社名 | 配当% |
---|---|---|
CII | ホーチミン市インフラ投資 | 9.81 |
BMP | ビンミン・プラスチック | 9.34 |
VCS | ビコストーン | 6.69 |
PLC | ペトロリメックス・ペトロケミカル | 4.88 |
VGC | ビグラセラ | 4.53 |
PTB | フータイ | 3.21 |
CTD | コテコンズ建設 | 1.36 |
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会社個別の分析

ビナコネックス(VCG)
ビナコネックスは、ベトナム最大級の総合建設企業で、北南高速道路、橋梁、空港建設などの国家プロジェクトを多数受注しています。
政府主導の公共投資拡大に伴い、2025年以降の業績成長が期待されます。特に、インフラ整備の進展による新規受注の増加が収益拡大につながる見込みです。今後は、持続可能な成長を目指し、海外事業やPPP(官民連携)プロジェクトへの参入も視野に入れています。
コテコンズ建設(CTD)
コテコンズは、民間および公共建設プロジェクトに強みを持つ大手ゼネコンです。
建築技術力が高く、高層ビルやインフラ開発で多数の実績があります。近年、政府の公共投資政策の恩恵を受け、橋梁・都市開発案件の受注が増加しています。効率的なコスト管理と生産性向上に注力しており、今後も高利益率を維持しながら成長する可能性が高いと期待されています。
シエンコ4(C4G)
シエンコ4は、道路・橋梁・鉄道インフラ建設を手掛ける国営建設企業で、政府からの安定した受注基盤を持っています。
特に、北南高速道路や地方の交通インフラ整備の中心的な役割を担っており、公共投資拡大の恩恵を最も受けやすい企業の一つです。大規模プロジェクトへの参画が続くことで、売上と利益の継続的な成長が期待されています。
ハイバントンネル管理運営(HHV)
HHVは、BOT(建設・運営・譲渡)方式による高速道路やトンネル管理を行う企業です。
現在、ベトナム国内の主要道路網整備に関与しており、既存プロジェクトの運営収益に加え、新規道路開発の拡大が成長を支えています。今後は、政府のPPP政策を活用し、さらなる受注獲得と収益基盤の強化を目指しています。
ビコストーン(VCS)
ビコストーンは、建築・インフラ向けの高品質な人工石材を製造する企業で、国内外で高い評価を得ています。
インフラ投資の拡大により、建築資材需要が高まり、同社の収益成長が見込まれます。また、輸出市場の拡大も順調で、特に北米や欧州市場でのシェア拡大が期待されています。建設資材分野の中でも、高付加価値製品の提供により競争力を維持しています。
まとめ
2025年のベトナムは、政府主導の公共インフラ投資が前年比36%増と大幅に拡大し、建設・インフラ業界にとって追い風となる年になります。
北南高速道路やロンタイン国際空港、都市環状道路などの国家プロジェクトが本格化し、建設請負企業や建設資材企業、道路管理企業に大きな恩恵をもたらすでしょう。
これらの企業は、政府のインフラ投資拡大により、安定した収益基盤を確保しながら中長期的な成長を遂げる可能性が高いです。
ただし、建設業界は資材価格の変動や土地収用の遅れなどのリスクも抱えており、投資家は政府の予算執行状況やプロジェクトの進捗を注視する必要があります。
今後、ベトナムのインフラ整備が加速する中で、成長性と安定性を兼ね備えた企業への投資が重要な戦略となるでしょう。
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