今回は、ベトナム肥料業界の各社を業績を比較していきたいと思います。
ベトナムは農業国として、肥料産業が国の食料生産を支える重要な役割を担っています。
国内には尿素(Urea)や複合肥料(混合肥料)などを生産する企業が多数存在し、ASEAN諸国への輸出も拡大中です。
2024年は、生産量の増加、輸入競争の激化、国際市場の価格変動など、業界にとって変化の多い年でした。さらに、政府が発表した2025年7月からの付加価値税(VAT)改正が、業界に大きな影響を与えると予測されています。
本記事では、2024年の振り返りと2025年の展望を解説します。
2024年の振り返り
2024年のベトナムの肥料市場は、国際的なリスクと政府の支援の影響を受けました。
ロシア・ウクライナ戦争の長期化により、エネルギー価格の変動や物流の遅延が発生し、肥料の原材料供給が不安定になりました。
また、中国の肥料輸出規制が市場の供給バランスを崩し、ベトナムの輸入依存を強めさらに、干ばつや洪水などの気候変動が農業生産に影響を与え、肥料の需要が変動しました。

国内生産の拡大
2024年の国内生産量は前年比11.6%増と成長を続け、約600万トンを記録しました。
- 尿素(Urea):窒素を多く含み、主要な農作物向けの肥料(227万トン生産、+8.7%)
- 複合肥料(NPK):窒素・リン酸・カリウムを含む多用途肥料(260万トン生産、+11.5%)
輸入の増加
- 総輸入量:435万トン(前年比+31.1%)
- 主な輸入国:
- 中国(42.5%):最大の輸入元
- ロシア(11.6%):輸入量が急増(前年比+836.1%)
輸出の拡大
ベトナムの肥料輸出は、ASEAN市場を中心に拡大しました。
- 総輸出量:144万トン(前年比+10.9%)
- 主な輸出先:
- ASEAN(53%):特にカンボジア、マレーシア、フィリピン向けが増加
- 韓国、台湾、日本も輸出先として伸びている
2025年の展望
2025年のベトナムの肥料市場は、安定成長が続くと予測されています。
農産物価格の上昇により、農家の肥料使用が増え、市場の需要が維持される見込みです。

政策面では、2025年7月から施行される付加価値税(VAT)5%の適用が業界に大きな変化をもたらします。これまで税還付が受けられなかった国内肥料メーカーは、コスト負担が軽減され、特に尿素を生産する企業が恩恵を受けると考えられます。
国内市場の拡大
2025年の市場規模は42億USD(前年比+3.38%)と成長が予測されています。
- 農産物価格の上昇 → 肥料需要の増加
- 季節需要 → 冬春作、夏秋作、旧正月前の需要増
- 自然災害の影響 → 災害後の農業復旧のための肥料需要
2. VAT改正の影響
2025年7月1日から、肥料が5%の付加価値税(VAT)対象になります。これまでVATの還付が受けられず、コスト負担が大きかったが、今後は還付を受けられ、価格競争力が向上していきます。
特に尿素生産企業にプラスになります。
Cà Mau肥料(DCM)、Duc Giang化学(DGC)
肥料業界の会社紹介

肥料業界は多くの企業が存在しているため、売上規模から13社をピックアップしています。
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
データは2024年12月末時点のものです。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
DPM | ペトロベトナム化学肥料 | A | A | B | A |
DCM | ペトロベトナム・カマウ肥料 | A | A | B | A |
CSV | 南部基礎化学品 | A | B | A | A |
BFC | ビンディエン肥料 | B | C | B | B |
LAS | ラムタオ化学肥料 | B | C | B | B |
NFC | ニンビン・リン酸肥料 | B | D | F | D |
PSE | 東南部ペトロベトナム化学肥料 | A | D | D | B |
PSW | 西南部ペトロベトナム化学肥料 | A | C | B | A |
PMB | 北部ぺトロベトナム化学肥料 | A | D | B | B |
基本的には財務が良い会社が多い印象です。
上位3強の安定性は、素晴らしいものがあると思います。

この内容で株価は大きく下落しているので、チャンスあると思います。
2024年株価推移
2024年の株価推移です。

南部基礎化学(CSV)は+177%と大幅な上昇を記録し、業界内で最も優れたパフォーマンスを示しました。
ビンディエン肥料(BFC)やラムタイ化学肥料(LAS)もそれぞれ+64%、+50%と上昇し、市場の注目を集めています。
一方、ドゥックザン化学(DGC)やペトロベトナム化学肥料(DPM)、カマウ肥料(DCM)などは小幅な変動にとどまり、比較的安定した推移を見せました。
全体的に、2024年のベトナム肥料業界は株価の上昇傾向が強く、一部の企業は大きく成長しましたが、銘柄ごとのパフォーマンスには差が出たことがわかります。
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。

市場の中心的なプレイヤーはドゥックザン化学(DGC)とカマウ肥料(DCM)であり、いずれも大きな影響力を持っています。
ペトロベトナム化学肥料(DPM)はPERが高めで、投資家の期待が大きい一方、株価が割高に評価されている可能性があります。
ビンディエン肥料(BFC)はROEが高く、収益性が良好であることがうかがえます。
2024年売上ランキング
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。

ドゥックザン化学(DGC)は売上が高く、経常利益率も他の企業と比較して高い水準を維持しています。
一方で、ペトロベトナム化学肥料(DPM)とカマウ肥料(DCM)も売上規模が大きいものの、利益率はそれほど高くありません。
EPS・BPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。

ドゥックザン化学(DGC)はEPSが最も高く、収益性の高さが際立っています。
ビンディエン肥料(BFC)もEPSが比較的高く、安定した利益を上げていることがわかります。
配当利回りランキング
2022年度の配当実績です。Trading View データから取得しています。
昨年の配当実績÷年末の株価のため、今後の予想利回りではありません。
高い配当を出しているが高い企業が多いようです。利益を株主に還元する姿勢は強い業界のようです。
Ticker | 社名 | 配当(%) |
---|---|---|
NFC | ニンビン・リン酸肥料 | 8.65 |
PMB | 北部ぺトロベトナム化学肥料 | 8.51 |
PSE | 東南部ペトロベトナム化学肥料 | 7.84 |
BFC | ビンディエン肥料 | 6.2 |
PSW | 西南部ペトロベトナム化学肥料 | 6.1 |
DCM | ペトロベトナム・カマウ肥料 | 5.97 |
DPM | ペトロベトナム化学肥料 | 5.78 |
LAS | ラムタオ化学肥料 | 5.43 |
CSV | 南部基礎化学品 | 2.37 |

高配当株狙いの方にもおすすめできる業界ですね。
会社紹介
ドゥックサン化学(DGC)
ドゥックザン化学(DGC)は、ベトナム最大のリン酸系化学製品メーカーで、黄リン(P4)、リン酸塩、工業用化学製品などを生産しています。
特に黄リンは農業用肥料、電子部品、バッテリーなど幅広い分野で使用されており、同社の主力事業です。
2025年は、黄リンの国際市場での需要増加が見込まれ、輸出拡大による売上成長が期待されます。
加えて、アルミナや塩素化製品などの新規事業に進出し、収益源の多角化を進めています。
ペトロベトナム・カマウ肥料(DCM)
カマウ肥料(DCM)は、ベトナム最大の尿素(Urea)生産企業で、国内農業だけでなくカンボジアなどASEAN市場への輸出も行っています。
天然ガスを利用した尿素生産が特徴で、国内の農業生産に不可欠な存在です。
2025年は、政府のVAT改正の影響でコスト競争力が向上し、利益率の改善が期待されます。
さらに、2024年に買収したKVF社の設備を活用し、複合肥料(NPK)の生産を拡大する計画です。
輸出市場の拡大と国内需要の増加により、売上・利益ともに安定成長が見込まれています。
ペトロベトナム化学肥料(DPM)
ペトロベトナム化学肥料(DPM)は、ベトナム最大の国営石油会社ペトロベトナム(PVN)の子会社で、主に尿素(Urea)やアンモニアなどの窒素肥料を生産しています。
政府の農業支援策の強化により、農家の肥料購入が増えることで需要が底堅く推移すると見込まれます。
ビンディエン肥料(BFC)
ビンディエン肥料(BFC)は、国内向けに複合肥料(NPK)を生産・販売する企業で、農業向けの高品質な肥料供給に注力しています。
特に政府の農業支援策の恩恵を受けやすく、安定したシェアを維持しています。
2025年は、農産物価格の上昇により肥料需要の増加が期待されるほか、持続可能な農業推進の流れの中でBFCの製品が重要な役割を果たすと考えられます。
NPK肥料は比較的価格変動の影響を受けにくく、収益の安定性が高いため、今後も安定した成長が続く見込みです。

【過去記事はこちらから!】
まとめ
今回は、肥料業界の会社について、比較・まとめを行いました。
2025年のベトナムの肥料業界は、成長を続けながらも変化の多い一年になると予測されます。
農業の発展とともに肥料の需要は安定し、政府の支援や付加価値税(VAT)の改正によって国内生産企業の競争力が向上する見込みです。
一方で、国際市場の影響を受けやすい業界でもあり、中国の輸出規制やエネルギーコストの変動など、不確定要素も存在します。
全体として、ベトナムの肥料市場は成長余地があり、持続可能な農業の推進が今後のカギとなるでしょう。国内生産の強化や技術革新が進めば、さらに競争力のある市場へと発展していくことが期待されます。
<参考資料>業界比較のまとめ記事です。
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