今回は、2025年度のヘルスケア業界各社の分析および比較をしていきたいと思います。
ベトナムのヘルスケア業界は経済成長とともに発展し、国内外の投資家の関心を集めています。
2024年は、外資の投資動向、国内医薬品生産の成長、病院市場の拡大などが進みました。
特に、政府の政策が業界の発展に大きく影響を与え、病院向け市場やデジタルヘルス分野での変革が進みました。
本記事では、2024年の振り返りと2025年の展望を詳しく解説します。
2024年の振り返り
2024年のヘルスケア業界は「外資の継続投資と医療政策改革」が特徴的な年となりました。

医薬品市場の成長と輸入依存
- 2024年の医薬品市場規模は69億USDに達し、前年比+8%の成長を記録。
- 一方で、原材料の輸入依存度は依然として高く、医薬品および原材料の輸入額は前年比+26.9%増の35.6億USD。
- 供給元の70%が中国、17.2%がインドであり、安定供給が課題。
- ベトナム政府は、国内生産の拡大に向けてインセンティブを提供し、製薬企業が自国での生産能力を強化するよう促している。
病院向け市場の成長
- イメックスファーム(IMP)は、EU-GMP認証の工場を活用し、病院向け販売を拡大
- 政府の新たな薬事法改正により、国内企業の医薬品供給が安定し、病院向け市場(ETCチャネル)での競争力が向上
- 医療保険制度の改革により、国内製薬企業の市場参入が容易になり、売上増加が期待
外資投資の継続
- あすか製薬(日本)がハタイ製薬(DHT)の株式を38.2%まで拡大
- DBDでは、スイスのKWE Beteilgungen AGが持ち株比率を10%まで引き上げ
- 外資の関心は依然として高く、新たなM&Aの可能性
2025年の展望
2025年は、政府の支援のもと、国内医薬品生産の強化が進むと同時に、デジタルヘルスの活用がさらに拡大する見込みです。
また、業界全体が競争力向上を目指す中、国内企業と外資企業の役割がより明確になりそうです。

医薬品市場の成長継続
- 2025年の市場規模は約75億USD(前年比+8%)と予測。
- 政府目標:2030年までに国内生産比率80%を達成し、輸入依存を減少させる計画。
- EU-GMP認証の取得がカギとなり、認証を持つ企業が市場での競争力を強化。
政府の政策と規制の影響
- 改正薬事法(2025年7月施行)により、医薬品の登録・流通手続きが簡素化される。
- 医療保険制度の整備により、病院向け販売が拡大し、国内製薬企業の恩恵が増加。
- 電子処方箋の導入が進み、病院と薬局間の連携がスムーズになる。
デジタルヘルスと医療機器市場の発展
- 遠隔医療の普及により、都市部だけでなく地方の医療アクセス向上が期待される。
- 電子カルテと診療情報のデジタル化が進み、医療の効率化が加速。
- 医療機器市場の拡大により、病院の設備強化が進む。
ヘルスケア企業の紹介
売上規模から14社をピックアップしています。

会社概要
社名 | Ticker | 特徴 |
---|---|---|
ハウザン製薬 | DHG | ベトナム最大手の製薬会社、大正製薬が51.01%保有 |
ハタイ製薬 | DHT | あすか製薬が筆頭株主で出資を拡大 |
イメックスファーム | IMP | 高品質なジェネリック医薬品の製造で定評あり |
ビンディン医薬品 | DBD | 抗がん剤市場に強み、EU-GMP認証取得を目指す |
チャファコ製薬 | TRA | 伝統的な製薬技術と最新技術を融合した製品開発 |
タイグエン国際病院 | TNH | ベトナム北部の主要医療機関、病院経営が主力 |
ドメスコ医療輸出入 | DMC | 医薬品の輸出入および製造を手掛ける大手企業 |
クーロン製薬 | DCL | 多様な医薬品の製造・販売を行う企業 |
OPC製薬 | OPC | 伝統的なハーブ製品と現代医薬品の製造 |
第3中央製薬 | DP3 | 医薬品の製造と流通を行う大手企業 |
ファーメディック製薬 | PMC | 医薬品の製造・販売および流通を手掛ける |
中央薬品 | VDP | 国内市場向けのジェネリック医薬品を中心に製造 |
日越医療機器 | JVC | 医療機器の輸入販売を行い、日本との取引も多い |
ベンチェー製薬 | DBT | 地方市場向けの医薬品販売に強み |

大正製薬、あすか製薬など日本の企業名もみられます。
FiinTrade Rank
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
DHG | ハウザン製薬 | C | B | C | B |
DHT | ハタイ製薬 | D | D | B | C |
IMP | イメックスファーム医薬品 | C | C | D | C |
DBD | ビンディン医薬品・医療設備 | C | B | B | B |
TRA | チャファコ製薬 | B | B | B | B |
TNH | タイグエン国際病院 | C | B | B | B |
DMC | ドメスコ医療輸出入 | B | B | C | B |
DCL | クーロン製薬 | C | B | D | C |
OPC | OPC製薬 | B | D | C | C |
DP3 | 第3中央製薬 | B | C | B | B |
PMC | ファーメディック製薬 | B | C | C | B |
VDP | 中央薬品 | C | B | C | B |
JVC | 日越医療機器 | C | D | B | B |
DBT | ベンチェー製薬 | B | D | F | C |

市場の成長に合わせて、ゆっくり確実に成長という感じの企業が多いですね。
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2024年12月末のものです。

イメックスファーム(IMP)、ハウザン製薬(DHG)、ビンディン医薬品(DBD)は収益性と市場評価のバランスが取れた企業です。
ハタイ製薬(DHT)はPERが極めて高く、投資家の期待が大きい企業といえます。
売上ランキング
下記のグラフは、各社の2024年の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。

ハウザン製薬は売上規模が最大ながら、高い利益率を誇ります。
一方、第3中央製薬は売上規模が小さいものの、最も高い利益率を誇る。
タイグエン国際病院やチャファコ製薬も利益率が高く収益性が優れています。
売上が多い企業ほど利益率が必ずしも高くない点が特徴的です。
EPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
時価総額の高い順番に左から並べています。

第3中央製薬やファーメディック製薬は高いEPSを誇りますが、PERは控えめで市場の評価が割安に留まっています。
安定した配当を維持する企業も多いですが、必ずしも利益率と配当が比例するわけではなく、投資家にとっては成長性と収益性のどちらを重視するかが重要な判断基準となります。
配当
配当は各社下記のようになっています。Trading View データから取得しています。
Ticker | 社名 | 配当% |
---|---|---|
DHG | ハウザン製薬 | 7.38 |
OPC | OPC製薬 | 6.38 |
VDP | 中央薬品 | 6.25 |
PMC | ファーメディック製薬 | 5.48 |
DP3 | 第3中央製薬 | 5.22 |
TRA | チャファコ製薬 | 5.2 |
DMC | ドメスコ医療輸出入 | 3.01 |
IMP | イメックスファーム医薬品 | 1.03 |
DHT | ハタイ製薬 | 0.58 |

高配当銘柄も多いですね。
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会社個別の分析
ビンディン医薬品(DBD)
抗がん剤市場に特化し、研究開発を強化している。
2025年は新薬の承認取得により、売上が4,800億VND、純利益は前年比+15%の650億VNDと高成長が期待される。国内外の提携による技術移転も進めており、長期的な競争力を強化している。
イメックスファーム(IMP)
EU-GMP認証を取得した先進的な生産ラインを持ち、病院向け医薬品市場でのシェア拡大を目指している。
2025年の売上は前年比+10%の6,000億VND、純利益は+12%の800億VNDと予想される。政府の国内製薬企業支援策により、調達コストの低減が期待される。
ハウザン製薬(DHG)
国内最大の製薬会社として安定した成長を維持しています。
2025年の売上は5,300億VND、純利益は前年比+8%の750億VNDを見込む。特に、病院向けの販売網拡大と、OTC(一般用医薬品)市場でのブランド強化が成長を後押ししていきます。
タイグエン国際病院(TNH)
医療サービスの充実と病床数の拡大に注力。
2025年の売上は3,200億VND、純利益は450億VNDと予測。地方都市での病院開設が進み、地域医療の需要増加に対応しています。
チャファコ製薬(TRA)
伝統薬と最新技術を融合させた製品開発を加速しています。
2025年の売上は2,900億VND、純利益は前年比+9%の380億VNDを見込む。特に、輸出市場の開拓が成長を後押しし、アジア市場でのシェア拡大を狙っています。
まとめ
2024年のベトナムヘルスケア業界は、外資投資の活発化と政府の医療政策改革が進んだ年となりました。
医薬品市場の成長が続く一方で、輸入依存や競争の激化という課題も浮上しました。
国内企業は競争力強化に向けた設備投資や技術提携を進めており、今後の成長に向けた土台が築かれています。
2025年は、生産体制の強化とデジタル技術の導入がさらに進み、市場環境が変化する見込みです。
政府の支援策や規制の変更が業界に与える影響も大きく、企業ごとの戦略が重要となります。
引き続き、医薬品の供給安定化や病院市場の拡大に注目し、ベトナムヘルスケア業界の成長をみていきたいと思います。
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