今回は、ベトナムエネルギー関連の各社を業績を比較していきたいと思います。
国の成長が著しいベトナムにとって、民間企業や家庭でのエネルギー需要は増えており、この業界は成長産業ともいえると思います。
一方で、原油などは輸入依存度が高く、国際的な原油価格の変動にも、影響される業界ですので、そのあたりを注意しながら、この業界の恩恵を受ける会社や悪影響を受ける銘柄を探っていきたいと思っています。
2023年の展望
原油価格は高止まり
世界の経済成長とウクライナの危機により、マクロ経済の不確実性が高まっています。
原油消費に悪影響を与える可能性がありますが、以下の理由で原油価格は高止まりすると考えています。
- ロシアとウクライナの戦争が継続
- 欧米の対ロシア制裁による供給不足と、OPEC+による減産
- 中国の景気回復に伴う需要の回復
ベトナム証券会社は1バレル約90ドルの予想が多い模様です。
Oil & GASのサービスプロバイダーには成長のチャンス
ベトナムでは既存の大型ガス田が枯渇しつつあり、新規のガス田を開発することが重要です。
莫大な投資費用を要するBlock B-O Monガスパイプラインの建設が開始されます。
また、Nam Du–U Minh、Kinh Ngu Trang などのいくつかの E&P プロジェクトは、今後 2 年以内に開始される可能性が高く、今後数年間でサービス プロバイダー (EPC、掘削) により多くの雇用機会が提供されると予想されます。
石油流通セクターが回復する可能性が強い
2022年は、市場の不安定さと、関連コストの世界的な急増により、石油流通業者にとって厳しい年となりました。2023年については、
- 国内供給の再安定化
- 燃料の基本価格を構成するコストの調整
- ベトナムでの石油需要の増加
を背景に、ディストリビューターが復活する可能性があると考えています。
市場が混乱する中、強固な財務体質を持つ企業は追い風
マクロ経済の不確実性が高まる中、強固な財務体質を持ち、米ドル高に対するリスクが最小限に抑えられている企業は、荒波を乗り切るだけでなく、金利の上昇からも利益を得ることができます。
一部の企業 (GAS および PVS) は、独占的な地位と強力なビジネスモデルのおかげで、長年にわたって巨額の現金を蓄積しており、この厳しい市場においても強さを発揮しています。
ほぼ1社の独占事業ということもあり、強さがありますね
PLXは、ガソリン価格が政府によって規制されたことから経営難に陥りましたが
【各社財務状況】
左・・・キャッシュ保有と負債比率
右・・・利子収入と利子支出の金額
エネルギー関連企業の紹介
エネルギー関連企業の10社を取り上げたいと思います。
冠にペトロ(PV)とつく会社が多く、これらはペトロベトナム【Vietnam Oil and Gas Group (PVN) 】の関連会社としている企業となります。
Ticker | Name | 取引所 | 特徴 |
GAS | ペトロベトナムガス | HOSE | 天然ガス・石油ガス(PLG)供給の最大手企業 |
PLX | ペトロリメックス | HOSE | 石油・ガソリン小売の最大手企業、市場シェア50% |
BSR | ビンソン製油石化 | UPCOM | ビンソンで石油精製所の運営 |
POW | PVパワー | HOSE | ベトナム第2位の発電会社 |
OIL | PVオイル | UPCOM | 原油・石油製品の輸出入業務・保管 |
PVS | PVテクニカルサービス | HNX | 石油関連サービスでトップシェア |
PPC | ファーライ火力発電 | HOSE | ハイズオン省で大規模火力発電を運営 |
PVD | PVドリリング | HOSE | ベトナム唯一の石油採掘用のリグリース企業 |
NT2 | 第2ニョンチャック電力 | HOSE | 地方最大規模の発電所を運営、太陽光発電も注力 |
PVT | ペトロベトナム運輸 | HOSE | 原油輸送の専門会社 |
Fiin Trade Rank
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
GAS | ペトロベトナムガス | C | B | B | B |
BSR | ビンソン製油石化 | B | D | B | B |
PLX | ペトロリメックス | F | D | B | D |
POW | PVパワー | C | C | B | B |
PVS | ペトロベトナムテクニカルサービス | D | B | B | B |
PVD | ペトロベトナム・ドリリング | C | B | B | B |
NT2 | ペトロベトナム・第2ニョンチャック電力 | C | C | A | B |
PVT | ペトロベトナム運輸 | A | B | B | A |
PPC | ファーライ火力発電 | C | C | D | C |
OIL | PVオイル | F | D | B | C |
株価推移
2022年の株価推移です。
この業界のリーダー的役割のGASがなんとかプラスを保っていますが、業績の割には全体的に厳しい株価であったといえると思います。
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2022年12月末のものです。
ペトロベトナムガス、ペトロベトナム運輸などは、先行投資を進め、成長力をもっていること、第2ニョンチャック電力、ファーライ火力発電は、力強い電力需要から、今後も成長していくものと思われます。
参考までに2021年度末のものを残しておきます。
売上・利益比較
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。
EPS・BPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。
配当
2022年度の配当実績です。Trading View データから取得しています。
昨年の配当実績÷年末株価のため、過去の実績利回りではありません。
Ticker | 社名 | 利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|
NT2 | ペトロベトナム・第2ニョンチャック電力 | 5.72 | 57% |
PLX | ペトロリメックス | 3.79 | 212% |
PVS | ペトロベトナムテクニカルサービス | 3.74 | 76% |
PPC | ファーライ火力発電 | 3.56 | 39% |
GAS | ペトロベトナムガス | 2.96 | 43% |
会社ごとの分析記事
ペトロベトナムガス(GAS)
国営エネルギー企業(Petrolimex社)傘下のガス会社で、ベトナム全土でサービスを提供しています。
発電事業については、水力発電と太陽光発電に比重を置いているため、原油高の影響を受けずらい体制が出来ています。2022 年には、Sao Vang および Dai Nguyet 油田のフル稼働により、ガス量は 14.5% 増加しました。LNG参入についても、インフラ構築に向けて投資が進めています。
ペトロリメックス(PLX)
Petrolimex は、ベトナムの石油関連輸入の55%を占め、石油製品市場の55%のシェアで市場をリードしている企業です。
また、国内で2,300を超えるガソリン・スタンドを運営しており、ベトナムではなくてはならない企業の1つです。
PV POWER(POW)
PV POWERは、ベトナム第2の規模を誇る発電会社です。
電力需要が伸びているベトナムでは経済成長と併せて、伸びていくものと思われます。
まとめ
ベトナムエネルギー関連の各社を業績を比較しました。
昨期はコロナからの回復で、業績が良化した企業が多かったものの、ベトナム市場の悪化の煽りを受けて、下げた企業も多かったように思います。
また、ベトナムのエネルギー需要は急拡大をしておりますので、インフラ投資にも注目していきたいと思っています。
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