今回はベトナムを代表するIT企業・FPT Corporation(ティッカー:FPT)をご紹介いたします。
NVIDIAとの提携によりベトナムと日本で設立が進むAI Factoryは、AI開発と導入の拠点として国内外の注目を集めています。
また、自社大学によるAI人材の育成や、企業向けクラウドサービスの高度化も進めており、単なるIT受託企業から、技術プラットフォームを提供する企業へと進化を遂げつつあります。
こうした取り組みは、ベトナム政府の掲げる国家DX戦略とも連動しており、国内公共部門・教育・医療分野への技術導入においてもFPTは中心的な役割を担っています。
本記事では、FPTの事業構造と成長戦略、そして将来展望について、解説していきます。
会社概要

会社概要
FPT Corporation(FPT)は、ベトナムを代表するIT企業であり、ソフトウェア開発、ITアウトソーシング、通信、教育といった複数の分野で事業を展開しています。
本社はハノイにあり、従業員数は世界30カ国以上で従業員数は約8万人以上にのぼります。
FPTの主な事業には、以下が含まれます:
- ソフトウェア開発およびITアウトソーシング
- システムインテグレーション(SI)およびクラウドソリューションの提供
- インターネットサービス(FPT Telecomを通じて国内トップ3)
- 教育・トレーニング(FPT大学を中心とした教育事業)
また、FPTはベトナム政府、特に情報通信省(MIC)との連携を深め、国家規模のITプロジェクトや公共システムの開発を担っています。政府のデジタル化方針とも整合し、IT人材育成やインフラ整備を通じて国の成長に貢献しています。
NVIDIAと戦略的提携を結び、AIソリューションの開発・提供だけでなく、クラウドインフラや産業向けAI導入支援までを一貫して担う体制を整えつつあります。

ベトナムNo.1のIT会社です。IT技術を売りに様々な業界に進出しています。

財務状態もよく、さらに成長を続けていける会社です。
関連会社・子会社
子会社
会社名 | 主な事業内容・特徴 |
---|---|
FPT Software | 海外向けソフトウェア開発・ITアウトソーシング。 30カ国以上に拠点を持つ |
FPT Information System | ベトナム国内の政府・大企業向けSI事業を展開。 医療・金融・公共分野にも強み。 |
FPT Telecom(FOX) | ブロードバンド、データセンター、PayTVなどを提供 全国に広がる取引網を有する。 |
FPT Online(FOC) | デジタルメディア・広告事業を展開。 ニュースサイト「VnExpress」などを運営。 |
FPT Education | FPT大学を中心とした教育事業。 AIや半導体に特化した人材育成も推進中。 |
関連会社
会社名 | 主な事業内容・特徴 |
---|---|
Synnex FPT | 米Synnexとの合弁によるIT製品流通会社。 全国に3,800以上の代理店ネットワークを持つ。 |
FPT Retail(FRT) | 家電量販店「FPT Shop」および薬局「Long Chau」を展開。 ベトナム全国に店舗網を拡大中。 |
FPT Securities(FTS) | 証券業務(リテール、法人、投資銀行)を提供。 成長中の金融部門を担う。 |
公式ホームページ
FPT社の財務分析
2025年4月更新

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収益

2020年以降、売上・利益ともに堅調に拡大しており、特に2024年以降は成長ペースが加速しています。
2025年には純利益が前年から大きく伸び、利益率も上昇。
これはAIやクラウド事業の拡大と、国内外でのITサービス需要の増加が寄与したと考えられます。
2026年にはさらに売上が増加する見込みで、利益率も安定的に高水準を維持しています。

強い成長率を維持しています。
自己資本比率

自己資本比率は49.6%です。
総資産を着実に拡大しつつ、自己資本比率を安定的に維持しています。
2021年にやや低下したものの、以降は持ち直し、2024年には約50%に達しました。負債の増加も見られますが、資本の増強ペースが上回っており、健全な財務構造を保っています。
成長投資を積極化しながらも、自己資本の厚みを維持している点は、長期投資先としての安定性を示す好材料です。
1株あたり収益・資本、ROE/ROA

ROEは、28.7% ROAは、11.9%です。
資産効率は年々改善傾向にあり、ROE・ROAともに右肩上がりで推移しています。
特にROEは2020年の約25%から2024年には30%超まで上昇しており、資本に対する利益創出力の高さが際立ちます。
ROAも10%を超える水準で安定しており、総資産全体に対して効率的に利益を上げていることがわかります。
キャッシュフロー

2020年以降、安定した営業キャッシュフローを維持しながら、積極的な投資活動を継続しています。
投資キャッシュフローは一貫してマイナスですが、事業収益の厚みによってそれを十分にカバーし、フリーキャッシュフローはプラスを維持しています。
2024年には営業キャッシュフローが大きく伸び、現金残高も過去最高を更新しています。
財務キャッシュフローは年度ごとに増減がありますが、全体としてFPTは良好なキャッシュフロー構造を保っています。
配当利回り

FPTは安定した配当を維持しており、配当金額はおおむね右肩上がりに推移しています。
成長企業でありながら、着実な株主還元姿勢を示している点は評価できます。
チャート
現在の株価は下記のようになっています。(FinAnt提供)
今後の見通し
NVIDIA提携によるAI Factory稼働へ

FPTはNVIDIAと戦略提携を結び、2025年にAI Factory(開発拠点)をベトナムと日本で稼働させる予定です。FPT Smart Cloudが手がけるAIプロダクト(FPT.AIなど)はすでに1,000社以上に導入されており、今後は年30〜40%の成長が見込まれています。AI×クラウドの融合により、利益率の高い事業基盤が強化されます。
グローバル売上比率の上昇と日本市場の開拓
2024年時点で、FPTの海外売上比率は約60%に達し、そのうち日本市場が約40%を占めています。
特に日本では、大手企業からの継続案件や、M&Aによる事業拡張が進行中です。
2026年にはグローバル売上高が5,000億円(換算)以上に達する可能性があり、為替・金利安定時にはさらなる収益押上げ要因となります。
AI Factory
FPTは、NVIDIAと提携してAI開発拠点「AI Factory」をベトナムと日本に建設中です。
この施設は、AIモデルの設計・学習から実装・運用までをワンストップで支援するインフラ拠点として機能し、教育機関や企業のDX推進にも活用されます。特にクラウド上での高性能演算処理や、大規模言語モデル(LLM)のローカライズ開発にも対応予定で、FPTのAI事業の中核を担う戦略的プロジェクトです。
【FPT AIファクトリーを詳しく知りたい方向け】

教育・人材育成による中長期成長基盤の強化
FPT大学を中心とする教育事業では、2024年時点で学生数8万人超(K-12含む)を誇り、AI・半導体専攻の学生も急増しています。
今後も年5〜10%のペースで学生数が拡大し、FPTグループ内への即戦力人材供給を通じて、技術優位性と人件費効率の両立を実現する見通しです。

自社の大学で育てて、卒業後すぐに最前線で戦えるのはかなりの強みです。
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まとめ・株価予想(独断)
FPTは、AI・クラウド・半導体といった次世代分野への積極投資を背景に、テクノロジー主導の成長を加速させています。
特に、NVIDIAとの提携によるAI Factoryの稼働、日本市場での大型案件獲得、教育事業を通じたAI人材育成など、FPTの成長戦略は長期的視野に立った布陣が整いつつあります。
自己資本比率は約50%、ROEは30%超と、高い資産効率と健全な財務バランスも投資先としての魅力を後押しします。
今後もベトナムの国家戦略と連動しながら、国内外での成長が期待されます。短期的な調整局面があっても、中長期ではテクノロジー分野の中核企業として、引き続き注目に値する銘柄といえるでしょう。

外国人枠の空きが少ない銘柄ですので、チャンスがあれば狙いたいですね。
PERの過去5年平均は21.4で、予想EPSから見た適正株価は137,619VNDになります。

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