今回は、ベトナム民間銀行の中で安定した収益力と高い成長性を兼ね備えた注目銘柄、アジアコマーシャル銀行(Asia Commercial Joint Stock Bank、ティッカー:ACB))をご紹介します。
ACBは、全国200以上の拠点網とデジタルチャネルを駆使し、個人・法人の両市場を巧みに攻略するリテール銀行の代表格です。特に「安定した財務体質」「非金利収入の拡張」「リスク管理の先進性」の3拍子が揃い、他の大手民間銀行と比較しても、一歩先を行く存在です。
2024年には税引前利益が2兆VNDを超え、2025年にはさらに20%以上の増益が見込まれるなど、今後の収益成長にも期待がかかります。
本記事では、ACBの事業戦略、財務健全性、そしてベトナム市場における競争力について詳しく掘り下げていきます。

外国人枠がなかなか空かない貴重な銘柄です。
会社概要

概要
ACB(アジアコマーシャル銀行)は、1993年に設立され、現在はホーチミン証券取引所(HOSE)に上場している大手民間銀行です。全国に200を超える拠点を展開し、個人・中小企業向けのリテールバンキングを中心に、法人向け融資にも注力しています。
住宅ローンや個人融資において圧倒的な存在感を示しながらも、FDI企業や中堅企業への法人融資も強化し、両市場をバランス良くカバーしている点が特徴です。
また、債券などの高リスク資産には慎重な姿勢を取り続け、ベトナム国内でいち早くBasel IIIの基準を満たした先進的なリスク管理体制を構築しています。
これは、同業他行と比較しても際立った強みであり、ACBが堅実かつ持続可能な成長モデルを追求している証といえるでしょう。

リスクを抑えた財務優良な銀行です。
事業戦略・マーケット

ACBは「リスクを抑えた持続可能な成長」を中核戦略に据え、法人・個人双方の市場でバランスの取れた拡大を図っています。特に住宅ローンや中小企業向け貸出を中心に個人金融の基盤を強化する一方、証券(ACBS)やリース(ACBL)といったグループ会社との連携により、法人向け取引や非金利収入の領域も拡張しています。
マーケティング面では、都市部の若年層や中間層をターゲットにしたモバイルバンキングのUX改善に注力。アプリ経由での保険・投資商品のクロスセルを推進することで、取引単価とLTV(顧客生涯価値)の向上を目指しています。
さらに、高所得者や中堅企業オーナーなど収益性の高い顧客層に対しては、専任担当による資産管理サービスを拡充。支店チャネルでは、地方都市でのモバイルブランチ導入や、効率的な人材再配置によって営業生産性を改善しています。
また、Eコマース、不動産、教育などのプラットフォームと連携し、購買・契約行動に合わせた即時金融サービスを提供するB2B2C戦略も進行中です。これにより、銀行外での接点から新たな収益機会を創出しています。
公式ホームページ
PNJ社の財務分析
2025年4月更新

データはSSI証券から取得しています♪
収益

2020年以降、売上・利益ともに安定的に成長しており、特に2025〜2026年は法人融資の拡大やデジタルチャネルを活用した非金利収入の伸びが見込まれ、大幅な増加が予想されています。
利益率も一貫して50%前後を維持しており、コスト管理やリスク対応が効率的に機能していることがうかがえます。今後の収益成長の持続性にも期待がかかります。

2025年は会社予想、2026年は証券会社予想です。
自己資本比率

2020年から2024年にかけて総資産と総負債が着実に増加する中で、自己資本比率はおおむね9〜10%台を維持しており、健全な財務バランスを保っていることがわかります。
これは、資産拡大に対して資本の充実が伴っており、安定した経営基盤と健全なリスク管理体制を反映しています。銀行の信頼性や安全性を測るうえで重要な指標です。

自己資本率の高さは安心できます。
資本効率

白線のROEは20〜25%と高水準を維持しており、株主資本を効率よく活用して利益を上げていることを示します。黄色線のROAは2%前後で安定しており、銀行としては非常に優秀な資産効率といえます。
総じて、ACBはレバレッジに依存しすぎることなく、高い収益性を実現している健全な銀行であることが読み取れます。

ROA2%以上は超優良な銀行と言えるでしょう。
キャッシュフロー
キャッシュフローは以下の通りになります。

青の棒グラフ(事業活動)からは、毎年安定してプラスの営業キャッシュフローを生み出していることがわかり、銀行としての本業の強さが表れています。
一方、投資活動と財務活動によるキャッシュの動きは小さく、慎重な資金運用がうかがえます。
白い線で示された現金残高は年々増加しており、流動性に余裕がある健全な経営状態であることを示しています。
配当利回り
配当は下記のようになっています。

チャート
現在の株価は下記のようになっています。(FinAnt提供)
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今後の見通し
ACBは同業他行と比べても競争力の高いビジネスモデルと施策を展開しています。

法人貸出と個人向け商品の両立による安定成長
他の銀行がどちらかに偏りがちな中、ACBは法人向け貸出でFDIや製造業関連の成長を取り込みつつ、個人向け住宅ローンでも確実に需要を確保しています。
貸出先のバランスが良く、景気変動に強い収益基盤を持ちます。
法人向けでは高単価融資による利息収入が期待され、個人向けでは関連手数料収入の拡大が可能です。
デジタル+子会社連携による非金利収益の拡張
ベトナム銀行業界ではまだ非金利収入(NFI)の比率が限定的な中、ACBは証券(ACBS)やリース(ACBL)との連携、アプリやオンラインバンキングによるクロスセルを強化しています。
UXの高いアプリ設計と若年層向けのスマート口座サービスなどで、非金利収入が今後の利益の柱になりつつあります。
リスク管理とコスト最適化の徹底
Basel IIIに国内で先行して準拠しており、不良債権比率(NPL)は1.5%以下を維持しています。
貸倒リスクへの備え(LLR)も年々強化されています。
また、営業経費比率(CIR)は2025年に31%へ低下見通しで、他行平均よりも効率的な運営体制が利益率を下支えしています。
これらの要素が組み合わさることで、ACBは単なる数値の成長にとどまらず、実効性のある収益向上と持続的な株主リターンを提供できる体制を築いています。
まとめ・株価予想(独断)
ACBは、伝統的なリテールの強さに加え、デジタルバンキングや子会社(証券・リース)との連携によって非金利収入を拡大中です。
今後はモバイルチャネルによるクロスセルや、B2B2C連携による新たな収益モデルも期待されます。
「成長性」と「安心感」を両立するACBは、ベトナム銀行株の中でも注目すべき存在といえるでしょう。
中長期的な資産形成を考える投資家にとって、有望な投資先となると思います。
PERの過去5年平均は7.1で、予想EPSから見た適正株価は31,806VNDになります。

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