今回は、2023年度のベトナム小売り業界各社の分析・比較をしていきたいと思います。
小売りといっても、業界が多岐にわたっており、直接競合していることは少なく、比較することにあまり意味がないかもしれませんが、ベトナムを代表する企業であり、豊富な販売網・顧客をうまく活用し、異業種への参入をしてくることも予想できます。
一方で外資系企業も、ベトナムでの消費拡大を見越して、様々な企業が進出してきており、こちらの影響も考えていかなければいけないと思います。
2022年はコロナの反動もあり、消費は好調でしたが、後半に入って世界経済の景気の悪化もあり、少し勢いを欠いた部分もあります。
今回は、そのあたりを踏まえて、今後の展望を考えてたいと思います。
2023年の展望
「消費者の財布のひもがきつくなった」
個人消費は好調であるが、弱体化に備える
2022年度は統計上、前年比+25%と好調であったが、これは2021年コロナの反動と考えており、トータルとして力強さを欠いている状態にあります。
この低迷は、金利が落ち着き、最低賃金の引き上げが若干の追い風になると予想される第3四半期まで長引く可能性があります。
富裕層の台頭により高級品は伸びている
ベトナムの高級品市場はまだ初期段階にありますが、高級品に対する欲求が高まっている富裕層の台頭により、大幅な成長が見込まれています。
したがって、高級品セグメントの割合が大きい小売企業は、支出の減少によるリスクが低くなる可能性があると予想されます。
車、宝石、高級携帯電話などの消費は旺盛のようです。
事業拡大のペースを抑えて、景気回復を待つ
景気後退に対する懸念が高まる中、大規模な小売業者は事業拡大を減速しています。小売り店を展開するMSN、PNJ、FRTなどの企業は出店ペースを抑えることで、リスクヘッジをしてきています。
したがって、各企業は、低いレバレッジとキャッシュでより良い財務体質を維持する傾向があります。
体感では、消費はそれほど落ちてないようにも見えます♪
小売り企業の紹介
売上規模から10社をピックアップしています。
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
VNM | ビナミルク | C | B | A | A |
MSN | マサングループ | D | C | A | B |
SAB | サイゴンビール | C | B | C | B |
MWG | テーゾイジードン投資 | F | A | B | B |
VRE | ビンコムリテール | C | C | B | B |
PNJ | フーニュアン・ジュエリー | F | A | A | B |
FRT | FPTリテール | F | B | B | B |
DGW | デジワールド | D | A | B | B |
PET | ペトロベトナム総合サービス | C | B | B | B |
HAX | ハンサイン自動車サービス | B | D | B | B |
ビナミルク、サイゴンビールも小売り業者に追加しました。
参考までに昨年データも残しておきます。
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
MSN | マサングループ | F | B | B | B |
MWG | テーゾイジードン投資 | D | A | C | B |
VRE | ビンコムリテール | B | C | C | B |
PNJ | フーニュアン・ジュエリー | F | B | C | C |
DGW | デジワールド | C | B | A | A |
FRT | FPTリテール | D | B | A | B |
HAX | ハンサイン自動車サービス | B | C | A | A |
小売り業のブランド名および販売商品について、PHS証券がまとめていましたので、そちらを参考していただければと思います。
2021年株価推移
2021年の株価推移です。
厳しい中でしたが、PNJ、FRTはプラスです。
VN-INDEXと比較すると、VNMおよびVREも良かったです。
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2022年12月末時点のものです。
2022年の株価下落もあり、PERは全体的に低めになっています。
高級自動車販売のHAXはかなり割安な水準ですね
どこの企業も長期的には強そうな気がします。
参考までに昨年データも残しておきます。
2021年売上ランキング
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。
2021年売上トップは、ともにモバイルワールド社(MWG)でした。
小売りということもあり、利益率は低めです。
ビンコムリテール(VRE)は、小売りスペースを貸し出して利益を出していますので、高い利益率が目立っています。
EPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
時価総額の高い順番に左から並べています。
配当
配当は各社下記のようになっています。Trading View データから取得しています。
Ticker | 社名 | 利回り | 配当性向 |
---|---|---|---|
VNM | ビナミルク | 5.06 | 102% |
HAX | ハンサイン自動車サービス | 2.67 | 8% |
SAB | サイゴンビール | 2.10 | 42% |
PNJ | フーニュアン・ジュエリー | 1.67 | 16% |
DGW | デジワールド | 1.47 | 10% |
MWG | テーゾイジードン投資 | 1.17 | 14% |
MSN | マサングループ | 1.08 | 15% |
FRT | FPTリテール | 0.48 | 6% |
会社個別の分析
マサングループ(MSN)
Vingroupより、Vinmartを買収し、小売業界に参入しました。外資との闘いが強いですが、地元系のスーパー、コンビニとしてどう戦っていくかがポイントです。
モバイルワールド(MWG)
携帯販売・家電販売・スーパーの3つのブランドをもつ会社です。
近年、様々な場所でこの会社の看板を見るようになっています。
フーニュアンジュエリー(PNJ)
宝石ブランドとして、ベトナムで有名な会社です。こちらも店舗を増やしています。
ビンコムリテール(VRE)
ビングループの一員として、主にリテール部門を担当している会社です。各地につくられたVincom Centerには国内国外のブランド品が販売されています。
デジワールド(DWG)
携帯電話・PCなどのIT機器販売を手掛けてきています。近年では日用品・化粧品などの販売を手掛け、急成長してきています。
ビナミルク(VNM)
ベトナムで一番有名な会社と言ってよいと思います。ベトナムNo1の牛乳メーカーです。
まとめ
今回は、小売り業界について、比較・まとめを行いました。
ベトナムは富裕層の増加や経済安定の恩恵を受けて、ますますこの業界の役割が大きくなってくると考えられます。
これらの業界の会社に投資して、大きな果実を得ることを検討してみても良いと思います。
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