今回は、ベトナム銀行業界の各社を業績を比較していきたいと思います。
銀行各社で上場企業の30%~40%の利益を稼ぎ出している業界ですので、ベトナム株式投資を考える上で、ポートフォーリオの中心にくる業界かと思います。
2022年の市場全体の暴落により、銀行業界にはかなり割安感がでており、非常に狙いやすい業界かと思います。
2023年の展望
収益の伸びは鈍化するが、健全な財務体質から株価は戻ってくる!
厳しいマクロ環境で逆風は続く
ベトナム中央銀行は、政策金利を引き上げており、資金コストが上昇し、貸出金利への完全な転嫁は難しいため、貸し出しは2022年と比較して減少し、この利上げは必然的に銀行の純利息マージン(NIM)に圧力をかけていくことが予想される。
不動産市場の停滞と社債 (CB) の回復の鈍化により、銀行の資産の質と流動性が圧迫
流動性の制約と社債のデフォルト リスクが依然として存在するため、2023 年上半期の銀行の見通しについては慎重なスタンスを取る必要があります。
2023年下半期はより楽観的
多くの社債は、23 年上半期に満期を迎える予定です。
そのため、下半期は楽観的な見通しがたっていますが、予想よりも高い利上げ、予想よりも多い不良債権、不動産および CB 市場における精査の長期化など下振れのリスクを考慮する必要があります。
ベトナム銀行の財務状態の健全化
ベトナムの銀行はかつてないほど健全であり、このことは、ベトナムの堅調な経済拡大をよく表しています。
23年の会計年度の P/B の平均が 1.1 倍 という史上最低レベルの評価は、長期投資にとって魅力的なものに映ります。
PBRが1倍以下のものはチャンスといえます。
上場各社の紹介
HOSE/HNXに上場している銀行の一言紹介となります。
銘柄 | 社名 | 特徴 |
ACB | アジアコマーシャル銀行 | 個人向けリテールに注力する大手民間銀行 |
BAB | バックアー銀行 | ハイテク農業向け貸付に注力する中堅銀行 |
BID | ベトナム投資開発銀行 | 元4大国営銀行、最も歴史のある銀行 |
CTG | ヴィエティンバンク | 元4大国営銀行、旧商工銀行、三菱UFJが資本参加 |
EIB | エクシムバンク | 前身は輸出入銀行、企業向けサービス(輸出入決済)強い。 |
HDB | HDバンク | 前身はホーチミン市住宅開発銀行、傘下の金融子会社にクレディ・セゾンが出資 |
LPB | リエンベトポストバンク | ベトナム郵便総公社が出資する中堅銀行。保険業との連携強化 |
MBB | 軍隊銀行 | 前身は国防省系企業、消費者金融事業で新生銀行が出資 |
MSB | マリタイムバンク | 外貨取扱業務に強みを持つ中堅銀行、世界60か国と提携 |
NVB | クオックザン(国民)銀行 | 平均的な規模の銀行 |
OCB | フオンドン銀行 | あおぞら銀行が15%出資、イタリア保険大手・ゼネラリと提携 |
SHB | サイゴンハノイ銀行 | 元カントー省の地方銀行、SHBダナン、サイゴンFCのスポンサー |
SSB | シーバンク | 前身はハイフォン商業銀行、プレデンシャルと提携。財務良好 |
STB | サコムバンク | ホーチミンを本拠とする民間大手銀行、南部での知名度高い |
TCB | テクコムバンク | マサンが15%出資、大手企業(ビン、ベトナム航空)と良好な関係 |
TPB | TPバンク | デジタルバンキングに強み、FPT出資、無人銀行サービス強化 |
VCB | ベトコムバンク | 元国営4大銀行、みずほ銀行が資本参加、ベトナム最大の銀行 |
VIB | ベトナム国際銀行 | 自動車ローンでシェアトップ、豪コモンウェルス銀行が出資 |
VPB | VPバンク | 中堅民間銀行、消費者金融子会社(FEクレジット)はシェア55% |
各銀行特徴があるはずですが、名前だけではわからないですね。
UPCOMの企業は情報が少ないため、HOSE・HNXの銀行を取り上げます
Fiin Trade Rank
SSI証券が利用しているFiinTrade Rank という数値で会社の状態を大まかに把握できると思います。
- Value(価値、割安度)・・・Value株のランキング
- Growth(成長性)・・・成長株のランキング
- Momentum(勢い)・・・現在の勢い
- VGM(財務)・・・財務評価のランキング
Ticker | 社名 | 価値 | 成長 | 勢い | 財務 |
---|---|---|---|---|---|
VCB | ベトコムバンク | C | A | B | B |
BID | BIDV銀行 | D | B | A | B |
CTG | VIETIN BANK | C | B | B | B |
VPB | VPBank | A | A | B | A |
TCB | テクコムバンク | A | A | B | A |
MBB | 軍隊銀行 | A | A | C | A |
ACB | ACB | A | A | B | A |
SSB | SeaBank | C | A | B | B |
STB | サコムバンク | D | B | B | B |
HDB | HD Bank | A | A | B | A |
VIB | ベトナム国際銀行 | A | A | B | A |
EIB | エクシムバンク | C | B | C | C |
TPB | TPバンク | A | A | B | A |
SHB | サイゴンハノイ銀行 | B | A | B | A |
MSB | マリタイムバンク | B | A | B | A |
OCB | フオンドン銀行 | A | A | B | A |
LPB | リエン・ベト・ポストバンク | B | A | B | A |
NVB | クオックザン(国民)銀行 | F | D | B | D |
Aが3つつく会社が8社、財務Aは11社と優良企業がそろっています。
2022年の株価推移
2022年の株価推移です。
BID、SSB、VCBの3社のみが、プラスで推移しました。
ROE、PERのバブルチャート
縦軸がPER・横軸がROEとなります。円の大きさが時価総額となります。
データは2022年12月末のものです。
株価の下落および2022年の決算からPERは6以下に集中しており、かなりの割安感があります。
参考までに2021年度末のものを残しておきます。
<ROE参考資料>
2022年売上ランキング
下記のグラフは、各社の売上・経常利益・利益率を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。
売上トップは、BID・ベトナム投資開発銀行でした。
利益額トップは、VCB・ベトコンバンクでした。
EPS・BPS、PER比較
下記のグラフは、各社のEPS、BPS(左軸)・PER(右軸)を表しています。
左から時価総額の高い会社順に並べています。
全体的にPERが低い企業が多く、それほど割高感はないように思います。
銀行業界に丸ごと投資できるETF
ホーチミン証券取引所では、ベトナムの金融業界(銀行・証券・保険)の株価指数であるVNFINを発表しています。これに連動するETFとして、VNFIN LEAD【ティッカー:FUESSVFL】があります。
銀行各社に分散投資できるという意味で、非常に使いやすいETFとなっています。
※日本国内の証券取引所では購入できません。
分散させている点や定期的に比率を見直している点からも使いやすいと思います。
会社ごとの分析記事
ベトコンバンク(VCB)
ベトナム最大の元国営銀行。売上・利益・資産規模ともベトナム1の企業です。
テクコムバンク(TCB)
不動産向けの融資を増やしているマサングループの一員の銀行です。
VPバンク(VPB)
消費者金融でトップを走るFE Credit を子会社に持つ銀行です。
HD BANK (HDB)
子会社にクレディセゾンが率いる消費者金融がある銀行です。
ベトジェットの会長であるタオ女史が副頭取を務めており、デジタル化に注力をしています。
軍隊銀行(MBB)
Vittelが筆頭株主となる銀行です。
元々は軍需産業向けへの融資などを行っていた会社になります。
まとめ
今回は、ベトナムに上場している銀行について、まとめてみました。
どの企業も高い収益性と成長力を兼ね備えていますので、投資しやすい企業かと思います。
昨年の暴落は投資家にとってはチャンスともいえると思います。
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